「見なよ、夢吉。恋の花火があがってるぞ」

長い茶色の髪を装飾品などで一つに束ね黄色と赤などの衣装。
そして彼自身よりも大きな刀。
パッと見て派手な印象を受ける彼の名は前田慶次。
束縛を嫌う彼は京の都で自由気ままに暮らしていて都でも有名な存在である。
そして慶次の方に乗っている猿の名は夢吉。
手に持っていた大きな盃に注がれている酒を飲み干そうとしたその瞬間…

「キィッ!!!」

夢吉が空を見上げ叫んだ。

「どうしたんだよ。夢き…うわぁっ!!!」

不審に思った慶次は空を見上げたと同時に今、目の前で起きている現実に驚きが隠せなかった。
彼は一人の少女との出会いで大きく運命が変わる。

「お、女が!!!」






愛の絆を紡ぎし者 01







「グハッ!!!」

空を見上げた瞬間ではすでによける事も受け止める事も叶わなかった。
空から降ってきた少女は慶次の上に落ちてしまった。

「っ…!イタタ…って…あれ?生きてる?」

空から降ってきた少女は紛れもなくだった。

「何で…?さっき事故で…」

子供を助けようと道路に飛び出し車に突き飛ばされた筈なのに何故か生きて痛みすら感じることが出来る。
しかし周りを見渡すとそこはの住んでいる街などではなく満開の桜が咲いており
人々は美しい着物を見にまとっていてまるで時代劇にでも出てきそうな風景だった。

(…ここどこ?)

この場所がの住んでいた世界ではないという事がすぐにわかった。
そして考え込むとふと車にひかれた時に意識が遠ざかる前に聞いた声を思い出した。

『お前を…異世界に…』

「ってことは…ここは…異世界…?」

としか考えられない。
もしもあの声が夢ではなく本当ならその声の主がをこの異世界に飛ばしてくれたようだ。
の望み通りに。

「キィ…?」

グルグルと考えていたらの視界に小さな小猿が目に入る。

「…猿?」

普通の人間の反応はこうだろう。

「わ〜可愛い〜」

すっと手を出すと噛んだり引っ掻いたりせずの手にじゃれた。

「うっ…!」
「え?人の声…?」

下から聞えてきた人の声を不審に思ったは恐る恐る下を見た。
するとは思いっきり人の上に座り込んでいる事がわかり慌てて立ち上がった。

「ギャーッ!!」
「ギャーってそれはこっちの台詞だろ!?」

下に人が居た事に驚きはすぐさま後ずさった。
するとバッと立ち上がった慶次が素早くツッコミをいれた。

「だ、誰…?つーか、酒の臭いきつい…!」

ビクビクッとしながらは名を聞いた。

「俺は前田慶次。酒の臭いがするのはアンタが落ちてきたせいで顔面から盃に突っ込んじまったんだよ」

すると慶次はちゃんと名乗ってくれた。
そして何故、慶次の顔面が濡れていて酒の臭いがするのかも答えてくれた。

「あ、そうだったんだ…それはごめん…えっとこれでも使って顔拭いて?」

はスッとハンカチを取り出し差し出した。
すると慶次は「ありがとな」と言いながらニッと笑いハンカチを受け取り顔を拭いた。

「で、アンタは?見ない顔だな。と言うか…変な格好だな…」
「あたしは……変な格好?別に変じゃないって。むしろアンタの格好の方が変だと思うんだけど…」

しかし周りを見渡すとどの人も着物などを身にまとっているだけに制服姿のの方が確実に浮いている。

「えっと…ここはどこなの?」

不安を感じながらここがどこなのか尋ねてみた。
すると慶次はサラッと答えた。

「ここは京の都。すんげー華やかな所だろ?」
「きょう、京!?」

が驚くのも無理もない。
が住んでいた所は東京だからだ。

「なっ…え?えぇ!?」

グルグルと頭が混乱してきた

「まぁ、落ち着けって。ところで…アンタなんで空から降ってきたんだ?」
「実は…」

一人で考えていてもわからない為、は何があったのか全て慶次に話した。

「なるほどな…異世界から来たってわけか…」
「信じてくれるの…?」
「当たり前だろ?アンタがそう言うんだったらきっとそうなんだろうし。
まぁ、その格好からしてこの国の人間じゃないだろうって思ったしよ」

信じてもらえないと思っていたが慶次はあっさりとが違う世界の人間だと信じてくれた。
は話をわかってくれる人に会え少しホッとした。

「一応…日本人なんだけどね…で、ここは歴史上の世界ではあるけど…ある意味では違うんだな…」

慶次の顔をジッと見ては納得した。

(だって歴史の本とかで載ってる前田慶次って全然違うし…
まぁ、あれはイメージだろうけど…と言うより結構、現代風な顔だな…)

「何だ?俺の顔、ジッと見ちゃって。惚れたか?」
「誰がっ!確かに綺麗な顔立ちしてるとは思ったけどそんな出会ったばっかりの人間に惚れるわけない!」
「いや、一目惚れも俺は有りだと思うけどな」

いきなり車にひかれて死んだと思いきや夢の中で聞いた声の通り。
異世界に飛ばされて何故か歴史上の人物である前田慶次と知り合いわけのわからない状況だった。
だけどは不思議と慶次と話していると楽しいと感じてしまう。

「よしっ!決めた」

突然、慶次が口を開いては「何を決めたの?」と尋ねた。

「アンタの事…俺が守ってやるよ。命に代えても絶対に」
「え…?」

そんな言葉を言われたのは初めてなだけには驚きが隠せなかった。
少し胸の鼓動が早くなる。


「でも…あたしは守られる必要のない力持ってるし…桁外れのこの身体能力が…」
「だからって右も左もわからないアンタを一人にする訳にはいかねーよ。それとも俺と一緒に行くのが嫌か?」
「それは違う!」

思わずは即答してしまった。
すると慶次はニッと笑った。

「よろしくな、

名前を呼ばれてはドキッとした。
そしてもほほ笑んだ。

「こちらこそよろしく、慶次」

この出会いにより二人の運命は大きく変わる。
そこから二人の物語は始まる。