幸せを謳う詩 00







何の為にあたしはこの世界に生まれたのだろう。
何の為にこんな力があるの?
桁外れの身体能力。
その能力を何かの研究所の人に目をつけられた。
そして両親はいとも容易くあたしを売った。
実験を行われた事もあった。
毎日毎日、何かと闘わされてある日は変な薬を飲まされかけた。
流石に危険だと感じたあたしは力を使ってその研究所から逃げ出した。
家に戻ると両親はいなくなっていた。
あたしを売った時に得た大金でどこか違う所へと行ってしまったのだろう。
その瞬間、あたしはなぜか安心してしまった。
もうあんな人達とは会わなくていいのだと。
しかしこれからどうしようと思っていたら一人のお爺さんがあたしに声をかけた。

「一人なのかい?」
「…うん…」

あたしは静かに答えた。

「そうか…私も一人なんだ。よかったら一緒に暮らさないか?」

普通はこんな事言われたら怪しむ筈。
だけど直感で感じたからあたしはついて行った。
その人は決して悪い人じゃないと。
それからの日、毎日が楽しくて仕方がなかった。
お爺さんはあたしの力を決して悪いものではないと教えてくれた。
いつか誰かの為になるといつも優しく笑って教えてくれた。
そんな優しかったお爺さんはもうこの世には居ない。
でも今はその言葉を信じてあたしは今日も生きている。
たとえ周りの人間と少し距離があったとしてもそれは仕方ない事だと諦めていたから。
ずっと隠して生き続けないといけないと思うから。



「今日のご飯…何にしよ……っ!」

ぼんやりと信号待ちをしていると目の前の光景にあたしは驚きが隠せなかった。
子供が車にひかれそうになっていた。
慌ててあたしは子供を助けるために道路へと飛び出した。
この桁外れの身体能力のおかげで何とか子供を車にひかれる前に突き飛ばして助ける事が出来た。
だけど車は急には止まれない。
もうあたしが逃げる事など叶わない。
でもそれでいいかもしれない。
こんなつまらない人生をダラダラと生きるくらいならいっその事人一人でも助けて死んだ方がいい。
そんな事を考えている内にあたしの身体は車に突き飛ばされる。
だけど突き飛ばされたと思ったら意識がある。
普通なら死んでるのに。
意識がある。
不思議と思って目を開けようと思ったけど何だか目が開けられない。

『お前の望みは何だ?』

誰かが話しかけてきてる…誰?

…お前の望みは何だ…?』

望み…?
望みは…せめてあたしの力が誰かの為に役に立つ世界に…
そして叶うのなら…あたしを…受け入れてくれる人に…出会いたい…

『ならば…その望みを叶えてやろう…』

叶える?叶えて…くれる…?

『お前を…異世界に…』

異世界…?

『そして残りの願いはお前の手によってその願いは叶えられる。』

あぁ…眩い光が広がる…
意識が途切れていく…
でも残りの願いはあたしの手で叶えられる…?

『お前は…あの者に出会う事で必ず変われる』