(コンクールまであと3日か…でも…まだ何弾くか決めてないや…
火原先輩とも柚木先輩とも練習してたの聴いてそれを弾いただけじゃ駄目だし…)
放課後、溜息をつきながら膝にバイオリンケースを乗せグラウンドを見ていた。
第一コンクールまであと3日。しかし何を弾くかまったく決めていなかった。
リリにもらったガヴォットの楽譜とアヴェマリアの楽譜を見比べていた。
「どっちかを使うといいって言うけど…はぁー…」
ドゴッ!!!
が溜息をついた瞬間、顔面にサッカーボールが飛んでくる。
「…………」
恋愛革命 03
ボトッと音を立てながらサッカーボールが地面に落ちの手の近くに転がってくる。
「ふざけんなぁっ!!!!」
は手元に転がってきたサッカーボールを全身全霊の力で殴る。
すると物凄い音を立てサッカーボールは爆発し原型を留めていなかった。
「あーやっちゃった…」
「悪い。こっちにボール飛んでこなかったか?」
グラウンドから走ってきたのは鮮やかな緑色の髪をした生徒。
普通科の制服でネクタイの色からして二年生だろう。
「うん。顔面に飛んできやがったけど…ごめん。少し力入れて持ったら爆発しちゃった。
何かボールの空気抜けてたみたい。(うっわーすんごい髪の色…見事なまでの緑…まるでキャベツ)」
失礼なことを内心思いながら原型を留めていないサッカーボールを渡す。
「そ、そうか…悪いな。顔にって大丈夫か?(空気入れたばっかだったはずだぞ…普通に考えてもおかしいだろ…
ちょっとの力でましてや女の力であのボールを爆発させるってことは普通は不可能だろ…!?)」
苦笑しながら原型を留めてないサッカーボールを受け取る。
「うん、ちょっと痛いけど別に平気(あーキャベツっぽいって思ってたら何だかお腹すいてきたなー晩御飯何にしよ…)」
「そうか。と言うよりこんなところ居たらまたボール飛んでくるかもしんねーぞ。
ん?お前…普通科なのにヴァイオリン持ってんのか?珍しいな。楽譜まで持って」
「まぁ…成り行き上。コンクール参加者になっちゃって(う〜ん…野菜炒め…サラダでもいいな…あ、だったらドレッシング買いに行かないと…)」
「コンクール参加者ってお前…か?(にしてもさっきから何でコイツは俺の頭ばっかり見てんだ…?)」
「うん。そうだけど(あ、ロールキャベツもいいかも…おかず他に作らなくてもお腹いっぱいになるし)」
「お前が…か…なるほどな…ボール爆発させたのも納得だな…(俺の髪になんかついてんのか?)」
「何であたしの名前知ってんの?(よーし、今日はロールキャベツに決定!)」
初対面の相手に名前を知られていては少し不思議に思う。
(何か学校で噂になるようなことしたかな…?ヤバいようなこと…
ん〜思い当たることが多すぎてわからない…あ、それよりもキャベツあったかな?)
「いや、金やんが俺以外にも普通科から二人参加者が居るって聞いてて一人は日野がその場に居て紹介してもらったんだが
もう一人は金やんが名前とだいたいどんな奴か教えてくれててたからさ」
「どんな奴って言ってたの?」
「あー何か素手で柱を折って振り回せそうな奴で人を嘲笑いしてファータを虫とか言ってる残酷な奴って…」
「そうなんだ〜(金やんぶっ殺す…!覚えてろよ…手が滑って鉄パイプで
後頭部を思いっきり殴ってしまいました♪みたいな展開繰り広げてやる…!)」
「まぁ、見た感じはそんな風には見えねーけど…でも…ボールを…爆は「空気抜けてたからだっつってんだろ。髪の毛むしられてーのか?
キャベツみたいに。それよりファータのことなんで知ってんの?」」
は爽やかな笑顔で残酷なことを言ってボールの事を流す。
「まぁ…俺も成り行き上コンクール参加者になったんだよ…(髪をむしる!?つーか、キャベツって関係あんのか?!)」
「あー害虫…違った。ファータ見たんだね。キャベ…ごほん!アンタも気の毒ね」
「ま、まあな…(本当に害虫って言いやがった…こいつ…つーか…キャベって何だ?何を言いかけてたんだ?)」
だんだんと土浦はに恐怖を感じ始めた。
「えっと…アンタ名前は?」
「俺は普通科2年、土浦梁太郎だ。よろしくな」
「こちらこそ、よろしく」
(しっかし金やんが震えながらこいつのこと話してたの少し納得だな…)
土浦は少し青ざめながら金澤に同情した。
「ちゃん!」
「あ、火原先輩」
元気のいい声で二人の近くに駆け寄ってきたのは火原だ。
「あれ?二人とも知り合い?」
「知り合いって言うかさっき会ったばっかりで」
「そうなんだ」
「へー火原先輩とって知り合いだったのか」
「うん、そうだよ。ちゃんってすっごくヴァイオリンがうまいんだよ〜」
「そんなことないですって」
「へーそりゃ、聞いてみてーな」
「おーい!土浦ー何やってんだよー!」
少し離れた場所から土浦を呼ぶ声が聞こえる。
どうやら土浦とサッカーをしていた生徒が呼んでいる様だ。
「あ、呼んでる。それじゃあ、。失礼します、火原先輩」
「土浦ー敬語止めてくれよなーむずがゆいんだよー」
「その内に」
悪戯な笑みを浮かべながらが爆発させた原型を留めていないサッカーボールを手にグラウンドへ戻る。
「土浦っていい奴だろ?何か俺の方が先輩なのにアイツの方が先輩に思えてくるよ」
「そんなことないと思いますよ。火原先輩だって先輩らしいですよ」
「…えへへ。君にそう言ってもらえると嬉しいな。ところでちゃんはコンクールの曲決めた?」
「…………」
火原の何気ない一言がグサッと胸に刺さる。
「あれ?ちゃん?」
突然、無言になったの顔を心配そうに覗き込む。
「いや…まだ決めてないんですよ…曲…」
「あ、そうだったんだ…ごめんね?無責任な事言っちゃって。俺、てっきり君はガヴォットにするのかなって思ってて」
「え?」
「俺ね、君の音楽初めて聴いた時からすごく好きだなって思ってて。それで最近、よくガヴォット弾いてくれてたから
楽しみにしてたんだ。本番でも君のガヴォットが聴けるって。あ、別に無理に弾けって言ってるわけじゃないよ!」
「…………」
の近くに広げられていたガヴォットの楽譜を手に取る。
「俺はただ…君の音楽がまるで物語のように奏でられてるからすごいなって思ってて。俺、本当に君の音楽好きだよ」
「…………」
ニコッとほほ笑みながら火原はに楽譜を渡す。
「コンクールで何か困ったことがあったらいつでも言ってね!」
「あ、はい!」
も笑顔で楽譜を受け取りその楽譜を見る。
「よし…決めた…」
「え?」
「火原先輩、あたしはやっぱりガヴォットにします。テーマにもピッタリですし」
「本当!?わぁ、嬉しいな!本番でちゃんの音楽が聴けるの楽しみになって来たよ!」
無邪気な笑顔を浮かべながら大喜びする火原を見てもほほ笑ましく思う。
「あ!ねぇ、ちゃん!」
「はい?」
「良かったら君の事…ちゃんって呼んでもいいかな?」
「え?」
火原の突然の発言にはきょとんとした表情になる。
「あ、もっと君と仲良くなりたいなって思って。せっかく友達になれたんだし名前で呼びたいなって思って」
「いいですよ、好きな様に呼んでください」
「本当?!よかった〜いきなり馴れ馴れし過ぎるかなって思っててさ…」
「そんなことないですよ。嫌いな相手だったら名前で呼ぶとか
言い出したら血祭りにあげるところですが火原先輩ならぜんぜん構わないですよ」
「よ、よかった〜(ち、血祭りって…何だろ…)」
「それじゃ、さっそく練習始めようかな〜」
楽譜を手に取り立ち上がる。
「あ、俺も練習しないと!」
「よかったら一緒に練習しません?」
「本当?邪魔じゃない?」
「もちろん。火原先輩と練習するのすごく楽しいですし!」
ニコッと明るい笑顔を火原に見せる。
「…!」
の笑顔を見て火原は一瞬、ドキッとする。
「どうしました?」
「あ、ううん!何でもないよ!は、早く練習始めよっか!」
「はい!さっさと始めないと時間がないですしね。あ、そうだ…金やんのこと後で締め上げとかないと…」
ボソッとが恐ろしいことを呟くが火原は胸の鼓動に驚きが隠せず聞こえていなかった。
(あ、あれ…何だろ…ちゃんの事見てると…胸がドキドキする…何でだろ…俺…どこかおかしいのかな…?)
火原はチラッとの方を見る。
ちょうどはヴァイオリンケースからヴァイオリンを取り出していた。
「じゃ、始めましょうか?火原先輩」
「う、うん!」
この気持ち…何なんだろ…
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