「うっそ!!コンクールの担当の先生って金やんなの!?」
「何だ。その言い方は」
「いや、心底似合わないなって思ったなんて言えないや!あ、ゴメン!言っちゃった♪」
わざとらしく語尾に音符までつけて言う。それは明らか金澤に対する嫌味だった。






恋愛革命 02







「しっかしお前さんとこんな形で関わるとはな」
「光栄でしょ?ありがたく思え。低知能動物」
「お前…俺を教師と思ってないだろ」
「うん♪それ以前に人間って思ってないから」

ニッコリと残酷なことを言うを見て大きな溜息をつく金澤。

「相変わらずだな。
「そりゃ、短期間で人間が変わったら怖いでしょ」

金澤は以前に助けられたと言う過去を持つ。
仕事をサボり過ぎていていろんな先生方に追われていた時偶然通りかかった

『先生、助けてあげよっか?』
『た、助けてくれるのか?』
『もちろん。その分…高いよ』

そんな会話をしている内に先生方が金澤に追いついた。

『先生方…すみませんが…紘人さんと私の邪魔をしないでくれません…?
これから結婚式について話し合わなくちゃいけないんで』
『ブッ!!!!!!』

金澤はの言葉に思わず吹き出した。

さん!それはどう意味なんですか!!!』
『いえ、どうもこうもそのままの意味ですよ。それでは』

ニッコリとほほ笑んで金澤と一緒に(半ば金澤を引きずって)その場を後にした。

「イヤー今となってはいい思い出ね」

うんうんと言いながら頷く。

「お前さんだけだろ…いい思い出になったのは」
「何で?金やんだって助かったでしょ?」
「あの状況だったらあのまま仕事させられた方がマシだったな…

危うく教員免許がなくなるとこだったからな。まぁ、誤解は解けたからいいとは言え…」

「チッ…あのまま誤解解けなかったら面白かったのに…」

は金澤にわざと聞こえるように大きな声で言う。

。お前さん…あのまま俺と結婚したかったのか?」
「ヤダ!!ありえない…!金やんと結婚するくらいなら死んだ方がマシだわ…」

(俺も心底お前さんとは結婚したくねーよ!!)

小さく握り拳を震わせながら心の中でそんな事を思うが口には出せなかった。

「で、今日はわざわざ俺を嘲笑いに来たのか?」
「え?それが八割の目的で二割が違う目的」

(あぁ…八割が俺を嘲笑いに来たのかよ…)

「何か害虫…違った。リリがセレクションのテーマ聞いて来いって言われたから聞きに来た」
「害虫…(ファータも苦労してるんだな…!)」

ファータが哀れで思わず涙が流れそうになった。

「つーわけで教えて」

金澤がダルそうにコンクールの書類を物色し始める。
そんな時に元気な声が聞こえてくる。

「金やーん!セレクションのテーマ教えて!」
「火原、先生に失礼だろ。すみません、金澤先生。セレクションについて聞きたいことがあって」

入ってきたのは音楽科の男子生徒の三年の先輩。
一人は髪が長く鮮やかな紫色の女顔負けの美少年。そしてもう一人は火原だ。

「あ、火原先輩」
「あ、ちゃん!あ、君もセレクションのことについて聞きに来たの?」
「ハイ、火原先輩もですか?」
「うん。柚木が聞きに行くって行ってたから俺も一緒に行こって思って」
「初めまして、僕は音楽科三年の柚木梓馬。火原からは話を聞いてるよ。何かわからないことがあったらいつでも聞いて。力になるから」

ニコッとほほ笑む姿はそこらの女よりも綺麗だと思うくらい美しかった。

「普通科二年のです。どうぞよろしくお願いします(何食ったらそんなに美形になんだよ…!と言うか髪の毛キューティクル全開!!)」
「じゃ、お前らまとめて来たしちょうどいいな。今回のテーマは華やかなるもの。まぁ、せいぜい頑張れ」
「うわー金やんが真面目に仕事してる…」
「何だよ。俺だってまともに仕事だってする」
「うーん…なんて言うか真面目に仕事してる金やんってちょっとキモいかも」

ニッコリと残酷ことを連発するに金澤は溜息をつくしかなかった。

「あーもうお前ら…行っていいぞ…」
「金澤先生。僕は少しお聞きしたいことがあるんですが…」
「あ?何だ?」
「火原、先に行っててくれるかな?練習。遅くなるかも知れないから先に始めてて」
「わかった。あ、ちゃん!よかったら俺と一緒に練習しない?」
「え?あたしですか?」

は火原から思いがけない誘いを受け少しビックリする。

「邪魔になんないんならいいですよ」
「邪魔になんてならないよ!それにもっと君の音楽聴きたいから!じゃ、行こうか」
「ハイ。それでは、柚木先輩。失礼します。んじゃーね。金やん!」

は火原と一緒に職員室を後にし屋上へ行く。

「ここ風が気持ちくてトランペット吹いてたら楽しいんだ!」
「確かに屋上っていいですよね。風が気持ちいいし!開放的な気分になるし!」
「練習始めるけどちゃん何練習するの?」
「そうだな…先に火原先輩聴かせて下さいよ」
「え?!俺?うわー何だか緊張するな〜」

火原は少し照れながらトランペットを手に取る。

「それじゃ、一曲」

はワクワクしながら火原を見詰めた。
そして火原がトランペットで奏でた曲は明るい印象のガヴォットだ。
は心から強く感動した。
ふぅっと一つ溜息をつき「どうかな?」と火原は聞いてきた。

「す、すごいです!!すっごく明るくて何だか聴いてるこっちまで感動しちゃって!すっごい上手ですね!」
「そ、そこまで褒められると何か照れるな」
「あたしも…今の曲弾いてみようかな…」
「あ、俺!聴きたい!」
「わかりました。下手でも笑わないでくださいよ?笑った場合は脳天いかれる位の力でぶん殴るんで!」

ニッコリとヴァイオリンを片手に言うので火原は一瞬身の危険を感じた。

「それじゃ…行きます」

ふぅっと溜息をつき目を閉じヴァイオリンで音楽を奏で始める。

「……!」

火原はの奏でる音楽に驚きが隠せなかった。
とても綺麗で繊細ででも力強く明るいだけじゃなく音楽が物語のように感じたからだ。

(わぁ…このヴァイオリンって知ってる音に共鳴するの…?だから…音楽が奏でれるんだ…)

弾き終わった後改めて魔法のヴァイオリンの効果に驚く。

「すごいよ!ちゃん!君の音楽って楽しいってだけじゃなくて何だか物語りみたいですっごく聴いてて楽しい!!」
「そう言ってもらえて嬉しいですよ。でも火原先輩のに比べたらまだまだです」
「ううん!!俺のなんかより奥が深いって言うかすっごく好きだな。俺…君の音楽」
「…!な、何だか面と向かって言われると照れますね…」
「ご、ゴメンね!俺、何か一人で先走っちゃって」
「いいえ!そんなことないですよ」

火原と一緒に練習をしている内には心の中でこう思った。

(…音楽も…結構楽しいじゃん…)