星奏学院の数年に一度に行われるコンクールが今年開かれる。
その参加者は普通科でも参加出来るのだが必然的に音楽科の生徒の参加になってしまう。
しかし今回のコンクールには…


―星奏学院内音楽コンクール―

【参加者】

音楽科 ・・・・・
音楽科 ・・・・・
音楽科 ・・・・・
音楽科 ・・・・・
音楽科 ・・・・・

【追加参加】

普通科 ・・・・・
普通科 ・・・・・
普通科  


そう。今年の参加者には何と三人も普通科がいるのだ。
その内の一人が…

…アンタすごいじゃない!」
「…………」
「ちょ、!?どこ行くの!?」

慌てて彼女は走り出した。
誰もいない練習室の扉を勢いよく開けた。

「オイこら出でこい!!!虫!!!」

そしてこれが第一声。






恋愛革命 01







『よく来たのだ!!』
「何がよく来ただ!!この野郎…!コンクールのあれ!!お前の仕業だろ!!」

の目の前にいるのはリリと言う妖精だ。
突然、目の前に現れたがは興味がないと言って名前を教え合いその場を立ち去ったのだ。
しかしその次の日にコンクールの参加者の発表で張り出されていた紙を見ると自分の名前があったのでリリの仕業だと思い急いで練習室へやって来た。

『早速見たのだな。コンクールの参加者の紙を』

「ふざけんなよ…害虫…!」
『だから害虫ではない!とにかく話を聞くのだ!』
「話?!手短にしないと…潰すからな…」
『わ、わかったのだ…!(相変わらず女とは思えない口の悪さなのだ…)』

そしてリリはコンクールのことから何から何まで喋った。

『と言うことなのだ。安心しろ。お前以外にも初心者の者は居るのだ』
「それって誰」
『日野香穂子だ』

はその名前を聞いて驚きが隠せなかった。

「香穂子まで巻き込んだの!?」
『知り合いなのか?』
「知り合いも何も…幼馴染…」
『それは奇遇なのだ!二人で頑張ってくれるといい!』

バンッ!!
が思いっきり壁を叩きリリは驚きと共に恐怖を感じた。

「お前…あたしに出ろって言うの…?コンクールとやらに…」
『そ、そうだ…』
「ふざけんのも大概にしたほうがいいよ。ファータのリリちゃん」

ニッコリと笑顔で言うが明らかに怒っている。
どす黒いオーラが放たれていてその笑顔が更に恐怖を増幅させていた。

「大体、あたしは楽器なんて持ってないしやったこともない!それでいきなりコンクール出ろなんて都合よすぎ!」
『楽器ならあるのだ!これを使うといい!』
「…!」

の目の前にヴァイオリンが現れる。
恐る恐るヴァイオリンを手に取る。

「…ヴァイオリン…?」
『日野香穂子にも授けた魔法のヴァイオリンだ。我輩の魔法がそのヴァイオリンには秘められている。誰でも音が奏でられる』
「……ハッ」

少し間を置いては思いっきり鼻で笑った。

『な、何がおかしいのだ!?』
「いや…別に。ただ一つ気になったんだけど…誰でもいいならあたしじゃなくていいじゃん。しかも香穂子に同じのあげたんならあたしはいいじゃん」
『それでは駄目なのだ。折角、我輩と波長があったのだ。我輩と波長があったと言うことは何か音楽においても可能性が秘めているハズ…』
「あーそう言って半ば強引に香穂子も参加させたって事ね。虫と波長が合っても嬉しくないわ」
『だから我輩は虫ではないのだ!』
「ハイハイ。じゃあ、アンタが百歩譲ってファータとしてやるわよ。で、面倒だからあたしはコンクールには出ないから」
『それは困るのだ!!お願いなのだ!出るだけでいいのだ!優勝などしなくていいのだ!ただ出るだけで!!』

遂にリリは涙を流し始めた。
はハァーっとため息を一つついた。

「わかった、わかった。半ば強制なんでしょ。参加するの。あんなに大っぴらに公表されたら出るしかないじゃない」
『本当か!?言ったのだな!!その言葉しっかりと聞き入れたぞ!!』

リリの表情がいきなりパァッとした笑顔に変わる。

「あ、テメー!嘘泣きだったのか!?チッ…これだから害虫は…殺虫剤まいてやればよかったな…」
『と、とりあえずヴァイオリンを弾いてみるといいのだ!日野香穂子よりお前は波長が合ってる!すぐに弾けるはずだ!』
「弾くのはいいけど…アンタは外行って。見られて弾くの何かうっとおしいから
『そこまでハッキリと言われると流石に傷つくのだ。わかった。外から聞いておくのだ』

リリは練習室から姿を消し練習室の中には一人になる。

「えっと…ヴァイオリンってこうだっけ…?構え方…」

うろ覚えながらヴァイオリンを構える

「音楽…何か知ってるの…あ、ロマンス ト長調だったら覚えてるかな…」

ゆっくりと弓を動かし音を奏でて行く。

「…………」

徐々に音から曲へと変わって行く。

(…やっぱり魔法のヴァイオリンってだけあって…うろ覚えでも奏でれるんだ…)

徐々に楽しくなって来たは思わず笑顔になる。
その時…
ガチャッ!

「…?」

突然、練習室の扉が開かれる。

「あ、練習してる子居たんだ?!ゴメン!勝手に入ってきちゃってって…あれ?」

入ってきたのは音楽科の男子生徒。恐らく三年生の先輩だろう。
黄緑色の鮮やかな髪の色をした男性だった。
は慌ててヴァイオリンをケースに直そうとする。

「…君…普通科の子?」
「あ、ハイ」

キョトンとした表情でこちらに尋ねてきた。
それもその筈。普通科の生徒が音楽科の練習室でヴァイオリンを弾いていたら変わっていると思うのは当然だろう。

「今のも…君が弾いてたの?!」
「ま、まぁ…」

少し戸惑いながらも返事をする。

(あー絶対に変な奴だって思われてる…!!)

「すごいね!さっきのロマンス ト長調!普通科の子にあんな演奏が出来るのなんてすごいよ!!」
「え?」

返事は意外な言葉で驚いてしまった。

「あ、ゴメン!俺、君の練習邪魔しちゃって…」
「いいえ。別に練習って程じゃないですし。ただ試しに弾いてみただけですし」
「え?もしかして…ヴァイオリン初めてなの!?」
「あ、はい。まったくやったことないです」
「えぇ!?お、驚いた…もしかして…君さ、さん?」
「そ、そうですが…」

自分の名前を何故知っているのか驚きつつも答える。

「初めてなのに参加者に選ばれるって本当に凄いね!あ、ゴメン!俺、音楽科三年の火原和樹。コンクールの参加者なんだ。よろしくね、ちゃん!」

火原はニッコリと笑顔で手を差し出して来た。

「あ、よろしくお願いします。火原先輩」

は戸惑いながらも火原の手を握る。

「あと、練習の邪魔しちゃってごめんね。それじゃ、何か困ったことあったらいつでも相談してね」

手を振って火原は練習室から出て行く。

「火原…和樹か…」

この出会いが革命を起こす。
音楽も恋愛も全て革命を起こすのが彼女だから…