「さてと…秋良。教えてもらおうじゃねーか」
「えっと…たいした事じゃないんだよ?」
「たいした事ない!?ほぼ全校生徒がお前の事を様付けで呼んでいる事がたいした事ない!?」
こんな風に大きな声を出したのも久しぶりだな。
誰かの事でこんな風に気になって仕方がない事なんてあっただろうか?
それはやっぱり…相手が秋良だからなのだろうか?
甘き追憶 03
「え?元々、お兄さんが坂本様って呼ばれてた?」
は何故、秋良が様付けで呼ばれているのかという事を説明してもらった。
秋良の兄はとても美形らしくそれこそ本当に坂本様坂本様と宗教の教祖の如く慕われていたようだ。
その弟である為、秋良は全校生徒から坂本様呼ばわりされていると教えてくれた。
「だから俺自身はそんなすごい人間じゃないって言ってるんだけど…」
秋良のその一言にはカッとなり立ち上がった。
「そんなことない!」
「?」
「何でそんな事言うんだよ…秋良!俺はまだ秋良と会って二日しか経ってないけど
それでも秋良がすごい奴だって事くらいわかったよ。頭いいし運動も出来るし人望も厚いし…
すごくしいし…何よりも暖かい雰囲気を持ってるよ…お前は…!」
自分でも驚いた。
誰かの事でこれほどまでにムキになっている自分に。
それはきっと秋良の事だからだろうと思った。
「俺も坂本の事、すごい奴だって思う」
「俺も。坂本様はもう少し自分に自信持ってもいいと思うよ。まぁ、そこが坂本様のいい所なのかもしれないけど」
の言葉に亨と裕史郎は同意した。
すると秋良は少し頬を赤くしながらニコッとほほ笑んだ。
「えっと…何だかすごく嬉しい。ありがとう」
「秋良…」
もまるで自分の事の様に嬉しくなってしまった。
今までこんな事はなかったのに本当に不思議だと思った。
「そうだ、もう一つ聞きたい事あったんだけど…亨と裕史郎がしてたあのほほ笑みなんだ?」
「あぁ、あれ?あれは…」
「簡単に言えば主導権は俺が握るって感じ?」
「ごめん…裕史郎…簡単すぎて逆にわかんねー…」
頭を抱えながらは答えた。
昨日から混乱する事ばかりで頭が痛くなってき始めていた。
しかしそんな事が今まで無かっただけに少しも嫌だとは思わなかった。
「つまり過剰なスキンシップをされない為の防衛手段。さっきも言ったとおり主導権を
こちらが握って軽くあしらって立ち去るって感じだね。ニッコリとほほ笑むと同時に神々しいオーラを出すのがポイントだよ」
「それが通称…姫スマイルか…」
「でもならすぐに出来ると思うぜ?実琴と違って大人だしさ」
「そこで実琴の名前が出てくるって事は実琴は常に過剰なスキンシップをされてるって事か?」
そう言うと亨と裕史郎は同じタイミングで頷いた。
秋良はハハハと言いながら苦笑していた。
どうやら姫スマイルの効果は本物のようだ。
「ん〜愛想を振りまけって事か…ま、参考にして頑張ってみるよ」
「それより。俺も一つ聞きたかったんだけど聞いていいか?」
「何だ?」
亨がにふと疑問に思った事を聞いた。
「お前さ…明日、お披露目なのに衣装なんでもう出来てんだ?」
「え?そ、それは…」
実は言うと姫の衣装担当の名田庄には流石にスリーサイズを隠して
衣装を作らせるのは無理がある為、あらかじめが女であるという事を教えて
秘密を知ったかわりに一日で衣装を完成させろと言う条件を修也は差し出したのであった。
「修也が名田庄先輩に話をつけてくれたみたいで…すっげーやる気になってくれて一日で仕上げたんだって…」
「「へぇ〜…」」
亨と裕史郎は冷めた声で納得した。
「それにしてもわざわざ俺に会う為だけにこの学校に姫として入学して来たんだよね?何だか少し照れるな」
秋良の発言にも思わず照れてしまった。
(か、考えたら普通はおかしいもんな…誰かの為だけに…転校してきたなんて…)
は色々と考えて決意した。
少しだけ本当の事を話そうと。
「お、俺さ…今まで誰かに興味持ったりとかした事ないんだ…
それで…秋良の話を修也に聞いてすっごく会いたいと思って…初めてなんだ…こんな風に人に興味を持ったのって…」
流石に男装してこの学園に入って来たということは言えなかったが自分が人に興味を持てないという事だけは話した。
すると秋良はしくほほ笑んだ。
「そっか…そうだったんだ。でも人に興味を持てなかったがこんな風に俺なんかに
興味をもってくれて少し嬉しいな。それがきっかけでが変われるかもしれないし」
「秋良…」
は思わず泣き出しそうになってしまった。
今までこんな風に言われた事がなかったからだ。
「俺もが困ったら力になるからさ」
そう言ったのは亨。
そして裕史郎も口を開いた。
「確かに俺達には興味がないかもしれないけど力になるよ。友達…だろ?」
二人の言葉を聞いてはニッコリとほほ笑んだ。
「ありがと…本当…この学校来てよかった…」
こんな風に思ったのは何年以上前なのだろうか。
もう今では思い出せない。
でも今はこの幸せを感じていたい。
そしてこの出会いに感謝したい。
「ふーやっとヅラが外せたと思ったら…今度はこんなゴテゴテの服を…」
いよいよ今日はのお披露目の日。
は流石に着替えは一緒には出来ないと言うわけで修也がうまく話を丸め込んでくれた様で別室で着替える事が出来た。
そしては男装時に被っているウィッグを外せたと思った瞬間にレースにリボンが大量。
更にヒラヒラフワフワの通称ゴスロリの服を着なくてはならない。
「うぅ…嫌だ…すっごく嫌だ…でもこれ着ないと…この学校居れないし…実琴が嫌がるのも納得かも…」
想像以上にヒラヒラフワフワの衣装には戸惑いを隠せなかったがこの学園に残る為にと意を決し渡された衣装を身にまとった。
するといいタイミングでドアがノックされた。
「、もう着替え終わったかな?」
「あ、秋良。大丈夫だけど」
「じゃ、入るね」
そう言ってドアが開かれた。
秋良がが着替えていた別室に入って来た。
「秋良、こんなんでいいのか?」
「…………」
「秋良?」
ぼんやりとしていた秋良の名を呼ぶと秋良はハッとする。
「あ、ごっごめん!うん。変な所は全然無いよ」
「そっか。よかったよかった。ふぅーそろそろいかねーとな」
が別室から出ようとした瞬間に秋良がの手を掴んだ。
「あ、秋良…!?」
あまりの突然の行動では驚きが隠せなかった。
「あ、ごめん!」
秋良もバッと手を離した。
「べ、別に男同士だからいいけど…(…なんか自分で言っておきながらむなしい…)」
「うん…ねぇ、ってお姉さんか妹さん居る?」
「え…?」
「いや、何だかの姫の姿見たら俺が知ってるって言っても一度しか会った事ないし
名前も知らないんだけど…その人にすごく似てたから…」
は秋良の言葉を聞いて驚いた。
秋良の言っている人物は本人だからだ。
「だからの姉妹だったらもう一度会いたいと思って…」
「…!」
はその言葉に驚きが隠せなかった。
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