「えっと逢坂家の地下に行くには具体的にどうすればいいの?」
「仏間のパズルを解けば地下に行ける道が開くよ」
「樹月物知りだねー」

地図を見て仏間の場所を確認しながらは感心した。

の為に出来る事はこれくらいだから」
「そんな事ないよ。樹月はかなり頼りになるし」
「ありがとう……こうして外に出られるようになったのものおかげだしもっと頑張るよ」
「あたしも頑張るから。樹月もあんまり無理しないでね」
「わかってるよ、

周りを思いっきり無視していい雰囲気なと樹月。

(この二人…見てるこっちがイライラするって事をわからないのかしら…?)






紅キ雫ニ滲ム蝶 09







「あーもうそこ!さっさと仏間に行くわよ!」

ずっと黙って見ていた澪が口を開いて仏間へと向かった。

「澪?どうしたの?さっきからずっとイライラしてるけど…」
「別に何でもない」

先々、進む澪の後を追いかけ心配そうに顔を覗き込む。

「繭と小さい頃に何があったの?」

聞かないで居た方がいいと思っていたが澪がずっとこの調子ならいっその事聞いてしまおうと決意した


思い切って繭と幼い頃に何があったのか聞いてみた。
すると早歩きで先へ向かっていた澪の足が止まる。

「…………」

の方を見向きもせずに歩き続けていた澪はジッとを見た。

「どうしてそんな事聞くの?」
「だって澪が様子おかしくなったの繭が黒澤家に閉じ込められてからだし。
それにさっきもどうしたのって聞いたら小さい頃の事思い出しただけって言ってたから。小さい頃に何かあったのかと思って」
「…………」

の言葉に澪は思わず無言になってしまう。
そんな様子を少し離れた所で樹月はただ無言で見ていた。


「何で…がそんな事…聞くの?関係のない事じゃない…」
「…!」

澪の言葉がの脳裏に焼き付く。

『関係のない事』

突き放されたような言葉に胸が痛む。

「……関係のない事なんかじゃない」


…?」
「だってあたし達友達だよね!澪が言ってくれたよね?あたし達親友だって!
すごく嬉しかったよ…親友の澪が困ってるのに何も出来ないなんて嫌だ!
何でも一人で抱え込もうなんてしないで…!あたしに出来ることなら何でもするから!」
…」
「あ、ゴメン…出過ぎたマネしちゃって…でも一人で抱え込むより…
誰かに話した方が良いって事もあるから…だから…澪は一人じゃないんだよ?」
「…!」

澪はに抱きついた。

「ゴメン…!関係ないなんて言って…ゴメンね…私…最低だ…!
八つ当たりなんかして本当に…最低だ…!本当にごめんなさい…」
「澪…」

初めて澪が見せた弱い部分。


に抱きついている腕も震えている。

「ううん…あたしの方こそ…ごめんね…」

そう言って澪を包み込むかのように抱きしめた。

「ありがとう…」

澪は小さな声でにお礼を言った。
そんな二人を樹月は優しい笑顔で見守っていた。

(本当はこの時、澪があたしに弱い部分を見せてくれて少し嬉しかったなって言ったら怒るかな?澪…
……うん…怒るどころか撲殺されそうだし心の中で静かにしまっておこう…うん…言っちゃ駄目だ…)

「もう大丈夫?」
「うん…もう落ち着いたから…ありがとう…」

しばらくして澪は落ち着きを取り戻した。

「お姉ちゃんと小さい頃何があったかは…もう少しだけ待っててほしいの…
自分の中で気持ちの整理が出来てからゆっくりとに話すから」
「うん。待ってる!」

更に友情が深まった二人。
ずっと黙っていた人がそろそろ黙っては居なかった。

「さーてと…澪は十分、とイチャついたから次は僕の番だね」
「何言ってんの!?樹月!?」
「本当、何言ってんの?樹月君。それとも樹月君…もしかしてヤキモチ?」

勝ち誇った笑みを浮かべ樹月を見る。
樹月は苦笑しながらちゃっかりとの手を握る。

「別に?僕との絆が壊れる事はないから」
「い、樹月…また誤解を生むような事を…」
「悪いけど私とは親友なんだから」

そう言いながら澪もの手を握る。

「二人とも…まぁ、これなら道に迷わないですむから良いかな〜」

はニコッと笑い二人の手を握り返した。
逢坂家の仏間へと辿りついた三人は仏壇のカラクリを見つける。

「ねぇ、樹月君。カラクリってどこをどう回したらいいの?」

仏壇のカラクリを調べていた澪が樹月に尋ねる。

「あぁ、それなら簡単だよ」

すると樹月はニコッと優しくほほ笑む。

「適当な所を適当に回して適当な時に適当にカラクリが止まって
適当にやり続けたのが偶然正解だったら地下への道は開くから」
「アンタ本当に適当ね」
「た、確かに適当にやり続けて偶然にカラクリが解けるかもしれないけど…
そんな事してる間に繭に何かあっても困るから…何とかカラクリの解き方わからないかな?樹月」
「簡単だよ。左上を一回と…左下を……」

樹月はコロッと態度を豹変させカラクリの謎解きをに教える。

(コイツ…いつかぶっ飛ばす…!)

静かに澪は握り拳を震わせていた。
そうこうしている内に地下への扉が開かれた。
地下は薄暗く不気味な雰囲気だった。
先へと進んでいると怪しげな箱が置いていた。

「何かものすごーく怪しい箱があるんですが…」
「いかにも調べろって感じよね」
「あれ以外何も無いみたいだし調べてみようか」

三人は箱の近くに寄った。
が静かに箱を開けるが中には何も入っていない。

「…何もないし…」
「でも地図ではここに鍵があるって書いてたよね」

うーんっと腕を組み考え込むと澪。

「二人とも。考え込むより先に行動に出た方がいいと思うけど。あれを倒すとか」

ニコッと笑顔で樹月が指差していた先に居るもの…

「うっわ!!!何あれ!?気持ち悪い!!」
「うをぉ!!!何だあれ!?」

目を隠し縄で縛られている男。

「忌人だね。どこからどう見ても怨霊だね」

ニコッといつも通りの笑みを浮かべながら爽やかに言う樹月。

「爽やかに言ってる場合なの!?」
「どこからどう見てもM野郎もとい楔の手下じゃない!!!危なくないの!?」
「一応…楔みたいに射影機が効かないってわけじゃないから危険じゃないけど…
あ、一つ言っておくけど忌人は音に敏感だから音の聞こえる方に攻撃を加えてくるから」

「「それを先に言えっ!!!!」」

見事にハモると澪。
しかしその声に気付いた忌人が三人に近付いて来る。

「ちょ、ちょ…!近付いてきるよ!」
「誰かが音に敏感だって言わないからだろうが!!」
「二人のダブルツッコミのせいだと思うんだけど…」

三人の喋り声は気付かれないようにもちろん小声。
忌人に気付かれないように静かに地下から出ようとする。

「…あ、あれ…鍵じゃない?」

地下から出ようとした最中に忌人の居た場所に鍵が落ちている事には気付く。

「本当だ…」
「気付かれない様に取ってくるね」
「あ、

は忌人に気付かれないようにそーっと鍵を取りに行く。
音も立てずに忌人もに気付かず鍵まであと一歩の所で…

「きゃあっ!!!」

は何も無い所で見事に顔面からこける。

「いったたた…!」

強打した顔を抑えながら起き上がると目の前には忌人が迫って来ていた。

「…………」
『…………』
「……ギャー!!!!!」

突然の忌人のアップに驚いたは叫びながら小刀を振り回す。

「これじゃ…私の出る幕はなさそうね」
ってかなり混乱してると強いから」

一人で忌人と戦闘中のを遠くから見守る澪と樹月。

「ねぇ、樹月君はに告白しないの?」
「と、唐突だね」
「別に唐突じゃないでしょ?ずっと気になってた事だし…


、今のままじゃ絶対に樹月君の気持ちに気付かないと思うよ」
「痛い所突いてくるね…」

澪のストレートな発言に樹月は苦笑している。
珍しく樹月が押され気味だ。

「でも…たまにはこれくらい言われないと僕も頑張れないのかもね」
「何か…今の樹月君…キモイ…」
「あんまりふざけた事ばっかり言ってると流石の僕でも怒るよ」
「冗談よ。でも私は応援してるから。樹月君の事。半分だけ」
「半分でも嬉しいって言っておくよ。ありがとう」

忌人を倒し終えたは珍しく喧嘩をしないで会話をしている澪と樹月を見て少し不思議な気持ちになる。

「…………」
「あ、。怪我はない?」

に気付いた樹月はの近くに駆け寄る。

「…………」
?どうしたんだい?」
「え?あ、ううん!何でもない…」

パッと樹月から視線を逸らしてしまう。

「……」

(視線逸らしちゃった…ヤバイ…)

気まずい雰囲気が二人の間に流れる。

、鍵は?」
「あ、これ…」

そんな気まずい雰囲気の中、澪が気を使ってに話しかけた。

「そう。ありがとう、。これでお姉ちゃん助ける事が出来るわ。
まぁ、一生あの中に居た方が平和だと思うけど…」
「み、澪…」
「それじゃ、行こうか」

スッと澪は手を差し出す。

「理由は何かわからないけど樹月君とは手、繋ぎにくいでしょ?」

の耳元でコソッと澪が言った。

「う、うん…ありがとう…澪」

は澪の手を握る。

「樹月君、行こう」
「そうだね」

複雑な想いを抱えたまま三人は黒澤家に向かう為、逢坂家の地下を後にする。