おはようございますかこんにちはかこんばんはのどれで挨拶すればいいのか
わからないですがとりあえずこんにちはで行きます。
です。今、ぶっちゃけ何時なのかわかりません。
外は真っ暗。
ずっと真っ暗。
軽く鬱になりそうです。
太陽が恋しい…
あーお腹も空いてきたな…ハハハ…
って!そんな現実逃避してる場合じゃないよ!!
今は人生最大のピンチな気がします。

「…………」
「…………」

チラッと後ろから来ている樹月を見る。
き、気まずっ…!
何だ…この空気…!?
いや、自分のせいなんだろうけど…!
そう、あたしは樹月から視線を思わず逸らしちゃったんだよ!!!
あぁー!!!呪い殺されるーーー!!!!
楓…アンタの妹いや正しくは姉と言うべきなのかそんな事はぶっちゃけ今はどうでもいい。
あたしは…アンタとの再会を果たす前に腹黒大魔王様事、立花樹月様に呪い殺されそうだよ。






紅キ雫ニ滲ム蝶 10








「ハァ…」
、さっきから随分と暗いわよ」

溜息ばかりついていたに声をかけたのは澪だった。

「うん…別に気にしないで…何でもないから…」
「……ふーん……」

何か勘付いたような表情をする澪。
仏間へと戻ると何か嫌な気配を感じた。

‘何かいる'

そう直感で感じた。

「…………」

は恐る恐る扉へと近付いた。
扉に近付くにつれ気配は強くなっていく。
は意を決し扉を開いた。
すると目の前にはそれはもうこの世の者とは思えないほどの目つきの悪い女性が立っていた。

「キャッ!!」

その目つきの悪い女性はに襲い掛かってきた。

『真澄さん…!どう…して…どうしてぇぇ!!!真澄さん…!』

はその発言にキレた。

「真澄って誰じゃボケー!!!」

モヤモヤとした自分の心に腹が立っていて樹月と気まずい空気になった事にもイライラしていて
目の前の目つきの悪い女性には誰かわからない名前を叫びながら襲われそうになったは完全にキレた。
小刀を鞘から出しその小刀で目つきの悪い女性を斬り捨てた。

『あぁ゛ぁぁーーー!!!折角…会え…たのに…!』

小刀を鞘に収めは目つきの悪い女性の言い残した言葉が気になった。

(折角…会えたのに?どう言う事だろ…つーか真澄さんって誰だ?)

「さっきの女の人、私とお姉ちゃんがこの逢坂家に入った時に最初に戦った怨霊なんだけど…
どうも恋人みたいよ。真澄さんって人。さっきも倒したのにしぶといわね…」
「どうやら彼女はこの村に迷い込んできたみたいだね。その真澄さんって人も…」
『あらよくわかったわね〜』
「「え?」」

どこからかと澪以外の女性の声が聞こえてくる。
樹月の声ともまったく違うため二人は声のした方へ振り返った。

「どうやら彼女も助かったようだね」

すると樹月はわかっていたかの様にほほ笑んだ。
三人の視線の先には長い黒髪を真ん中分けにした美人な女性がいた。

「「えっと…あのその…どちら様?」」

と澪はこれまでにないくらい見事にハモった。

『さっきは驚かせてしまってごめんなさいね。私、須藤美也子って言うのよろしくね』
「さっきはって事は…」
「さっきの…目つきの悪い…」
「あの女性が彼女だよ」
「「…………」」

と澪は目を見開きながら先程とはまったく違う姿の美しい美也子を見た。

『えっとちゃんでいいのかしら?貴方が私を斬った事でどうやら私、解放されたみたいなの』
「「えぇ!?」」
「さっきから二人とも見事にハモるね」

樹月がニッコリとほほ笑みながらツッコンだ。
すると美也子もクスッとほほ笑んでいた。

「だ、だって!さっきまで!テメー…末代先まで祟ってやる…このボケがぁ!!!みたいな恐ろしい顔してたじゃない!」
「そうよ!テメーら全員かかってこいや!!根性叩き直したろうやんけ!!!みたいなオーラかもし出してたじゃん!!」
『そう?でも私、元ヤンだからつい昔の癖が出てたのかしら。フフ』
「なるほど…ってえぇ!?元ヤン!?」

美也子の口から衝撃的な事実を聞かされる。

「うっそ!?元ヤンって!いいのか?!捏造しすぎじゃないのか!?作者!!」
「いつファンからも公式からもクレームかわからないくらいギリギリだよ…オイ…!」
「と言うより僕達の性格を捏造しすぎだから今更なんじゃないのかな?」
「そうよね…設定捻じ曲げ上等だもんね…」

樹月の言葉に何となく二人は納得してしまった。
美也子が元ヤンと言う事が真実かは定かではないがあれほど目つきの悪かった女性がこれほど美しい女性とは想像もつかなかった。

「それで彼女に渡したい物があるんだ」
『何かしら?』
「これを…きっと真澄さんって人が持ってたのじゃないかな?」

樹月は美也子に血まみれの指輪を渡した。
美也子はその指輪を見て驚きが隠せなかった。

『真澄さん…!』

美也子は樹月に渡された血まみれの指輪をギュッと握り締めた。

「あの指輪どこで拾ったの?樹月君」
「あぁ、黒澤家の大広間で見つけたんだ。何か役立つかなって思って」
「流石樹月…腹黒大魔王…」
「何かな?
「あ…いや…何でもないです…」

普段と変わらない会話なのにどことなくぎこちない二人。
澪はそんな二人を見てふぅっと溜息を一つついた。

『真澄さん…指輪を…持ってたのね…ちゃんと…あぁ…真澄さんの愛を感じるわ…』

美也子は指輪をギュッと握り締めうっとりしている。
しかしその指輪は血まみれで周りからすれば危ない人に思える。

『真澄さんって本当に照れ屋なのよ?私がちょっとまな板を素手で割っちゃって喧嘩になった時、
まぁ、私がすぐにラリアット決めて喧嘩は私が勝ったんだけどね。その後、真澄さんったら黙々と
まな板を片付けてすぐに新しいまな板を買ってきてくれたのよ。私…嬉しくて思わずアッパーしちゃったのよね…
そしたら真澄さんったら頬を真っ赤にしてこいつぅ〜vvとか言って…あぁ…真っ赤にするほど嬉しかったのかしら?私のアッパー…』

ラリアットにアッパー。
三人は美也子の元ヤン説が真実なのかもしれないと思えてきた。

(と言うよりバカップルの領域超えてる…美也子さんと真澄さん…)
(言えてる…普通…ラリアットにアッパーされたら別れたくなるだろ…)

と澪は目で会話していた。

『それで真澄さんってね、すっごく可愛い癖があるのよ?あのねー…』

(澪…どうする?指輪渡した瞬間、惚気話が始まったよ)
(んー…ぶっちゃけ私、さっさと帰りたいんだけど…)
(じゃあ、真澄さんを捜してあげたらどうかな?どうやら逢坂家に居るみたいだし)

惚気話を聞き流しながら三人は目で会話を始めた。
三人の本音は惚気話はどうでもいいからさっさと帰らせてくれだ。

(じゃ、二手に別れよう。私が美也子さんの惚気話聞いてるからと樹月君は二人で行って来て)
(え?!あ、あたしと樹月で?!)
(仕方ないじゃない!私じゃ、真澄さんの気配を感じる事も真澄さんの闇を祓う事も出来ないんだから)
(いいよ。僕一人でも。まぁ、もし攻撃をする術を持たない僕が一人で
真澄さんを捜して怨霊にやられてもはどうでもいいみたいだから)

「そんな事無いに決まってんじゃない!!」

は思わず大声を出してしまった。
流石の樹月も驚きが隠せないようだ。

『どうしたの?ちゃん』
「あ…いえ…何でもないです。ただ美也子さんと真澄さんって本当に仲が良いんだなって」
『そう?そう思う!?キャーもうちゃんったらわかってるわね。ウフ』
「はぁー…」

バカップル相手は本気で疲れると心から思った。

(じゃ、二人とも頑張って。さっさと帰ってこないとぶっ飛ばすから)
(…うん…わかった…)

澪の目は本気だった。
は樹月とコッソリと仏間を後にした。

「はぁ…!やっと解放された…!」
「本当、美也子さんと真澄さんって人はうっとおしいくらいバカップルだったんだね」
「う、うん…そうだね」
「…………」

はまったく樹月と目を合わそうとはしなかった。

(あぁ…どうしよう…何だか樹月と目を合わせられない…樹月は別に悪い事はしてないのに…!)

、こっちから何か感じる。行ってみよう」
「うん…(…何でだろ…急に…こんな風に意識しちゃうんだろ…
ただ澪と樹月が仲良く話してたのを見てて…何だか…樹月が…樹月が…)」

ぼんやりと理由を考えていたが言葉が見つからない。
奥の間へと入った二人は何かの気配はうっすらと感じていた。

…ゴメンね」
「え?」

突然、樹月はに謝った。
は樹月の突然の行動に驚きが隠せない。

「な、何が?」
「さっきからの態度…余所余所しかったから…何か気に障るような事したのかなって…」
「…!」

樹月の発言には驚きが隠せなかった。
それと同時に罪悪感を感じた。
自分が変に樹月と澪の仲の良さそうな雰囲気を見て樹月を直視できずに
視線を逸らし二人に心配をかけてしまったのは自分で謝らなくてはいけないのも自分だというのに。

「樹月…あの…っ!」
『…く…る……な…ぁ…』

低く冷たいかすれたような声が耳に飛び込んできた。
は声のした方へ振り返る。
目の前には全身切り刻まれ傷だらけの男が襲ってくる。
刀を鞘から抜こうとするが圧倒的に相手の方が動きが早かった。

「危ないっ!!!!」
「っ!!」

その時、あたしはもう駄目だと思った。
そして全身に痛みが走った。
だけどその痛みは生気を奪われた時の様な痛みじゃない。
何かに押されて地面に倒された時のような感覚だった。
それに意識はハッキリとしている。
目を開くと目の前にはさっき襲ってきた切り刻まれ傷だらけの男が立っていた。
恐らく彼が真澄さんだろうと思った。

しかし何故、彼に襲われたはずの自分が生きているのだろう。
生気を奪われた感じも傷一つない。
そして膝の辺りに感じる重みに冷汗が流れた。
下を見たら自分の恐れている事が起きているのではないかと不安になった。
しかし下を見なくては身動きをとる事が出来ない。
あたしは意を決して下を見た。


すると視界に飛び込んできたのはあたしが最も恐れていた光景。

「樹月…?樹月!!!ヤダ…!目を覚まして!!樹月!!!」

膝の上で意識を失って横たわっていたのはの大切な幼馴染である樹月だった。
が感じていた痛みも全て樹月がを切り刻まれた男から守るために押し倒した衝撃の痛みだったのだろう。
は樹月の名を叫んだ。

「樹月!樹月!!!樹月!!!っ!!」

何度、名を呼んでも目を覚まさない。

「っ!!!嫌ーーーーーーーーーーっ!!!!!」

その時、の叫び声に共鳴するかのごとく奥の間を一瞬で闇が飲み込んだ。
そして静かに紅キ雫が流れた…