が来た。
いつもと違う格好で何だか変な格好だった。
だけどを見るのは久しぶりで少し嬉しい。
は誰か一緒に居た。
八重に似てたけど変な格好だったけど…あれは八重かな?
でも私の声はきっと届かないんだろうな…
ねぇ、茜。
私の声聞いてよ。
それは私じゃないよ?
私はずっと茜の傍に居るのに…
どうして…気づいてくれないの…?
私の声を…聞いて…






紅キ雫ニ滲ム蝶 15







射影機の反応を頼りに着々と人形のパーツを集めていくと澪。
手に入れたパーツは左腕と左腕と首。

「あー目玉がない。目玉」
「澪ー女の子がそんな言い方するのは止めとこうよー」
「だって他にいいようがないじゃない」

そう言われてしまうと何も言い返せなくなってしまう。
はふぅと溜息をついて気になったことを口に出した。

「…それにしても人形のパーツがある所にどうして…薊の霊がいたんだろ」

パーツがある場所ある場所に何故か薊の霊が立っていた。
ただ立っているだけで攻撃をして来たりなどはしない。
まるで人形の様に立っているだけだが直感的に人形ではないと感じさせられる。
そして恐る恐ると射影機で撮影すると薊の霊は姿を消し人形のパーツがその場に落ちている。
まるで薊が人形のパーツをと澪に渡すかの様に。

「うーん…」
「まぁ、考えても仕方ないし右腕探しに行こう?」
「そうね。そういえば…時計のある広間の方って行ってなかったよね」

地図で現在地を確認しながらまだ行っていない場所と行った場所をチェックする。

「じゃ、そっちの方へ行こう」

繭の事も心配だと言いながら時計のある広間へと急いだ。
長い階段を降りている最中、何か女性の声が小さく聞こえ足を止めた。

?ど、どうしたのよ。急に止まって」
「…何か…聞こえない?女の人の声…」
「え?」

澪も耳を澄ませ集中して周りの音を聞いた。

「…何も聞こえないけど…」
「うそ?!絶対に聞こえたって!こう…何か叫びご『いやぁぁぁぁぁぁーーーーーーーーー!!!!!!!』」

の言葉を遮るかのように叫び声が響き渡り階段を降りている二人の真横を横切った。
ドンッと床に叩き付けられる様な鈍い音が響き渡った。

「…………」
「…………」

思わず二人は目を見開いて顔を見合った。
そしてしばらくの沈黙が続いた。

「……確かに…聞こえた…」
「…うん…出来れば気のせいだあってほしかった…」
「…さっきの女の人の叫びご…」

シュンっと何かが横切るような気配を感じ二人はバッと気配のする方へと視線を向けた。
するとスローモーションに時間が進むかのように目の前に飛び込んできたのは上から飛び降りてきた赤い着物の女性。
目が合いニヤリと笑った。

「…………」
「…………」

ギギギギギとぎこちない動きでと澪は顔を見合わせた。
そして階段の下から感じる嫌な気配。
ゴクッと唾を飲みすぅーと大きく息を吸い込んだ。

「「いやぁぁぁぁぁーーーーー!!!!!!!!!!」」

二人は同時に階段を駆け上がって行き無我夢中で走り続けた。
別の道の階段を猛スピードで駆け降り玄関付近へと首吊り人形の部屋の前で座り込んだ。

「はぁーはぁー…」
「あー…はぁ…はぁ…」

座り込んでいては危険だとわかりつつも今は壁にもたれかかって呼吸を整えたかった。
乱れた息も次第に整い始めふぅっと大きく溜息を吐いた。

「…ねぇ、澪…」
「何…?」
「あたし…この村に迷い込んでから色んな霊見てきてもうだいぶ慣れてきたと思ってたの…」
「…うん…それは私も…」
「だけど……あれは反則だと思うんだ…」
「うん…」

強気な二人がこれほど弱ると言う事は相当衝撃的だったのだろう。
ニヤリと笑った不気味な飛び降りの女の叫び声がしばらく頭から離れなさそうだ。
いつまでもここに座り込んでいるわけにもいかないのでとりあえず立ち上がり首吊り人形の部屋へと進んでいった。

「……善達…」

部屋の中には怨霊と化した善達がこちらを睨んでいた。
話し合いと言う雰囲気ではないと察した二人は戦闘体制に入った。
澪は射影機を構え、善達をファインダー内に捉えたがスッと善達の姿が消えた。

「…え?」

すると周りに吊られている人形達が動きだし澪を襲い掛かろうとした。

「澪!!!」

は小刀で人形達を吊るしてる糸を素早く斬っていく。
するとバタバタと音と同時に人形が落ち、善達が姿を現した。

「澪!!射影機で!!」
「わかってる…!」

しっかりと善達をファインダー内に捉え、シャッターを切る。
ダメージを受け怯んでいる所に連続でシャッターを切っていき善達は呻き声に近い叫び声を上げ、その場に倒れこんだ。
そして小刀を構えたがすぅっと息を吸い込み、善達を一刺しすると徐々に邪気は消えていき善達は生前の姿へと変わっていった。

「…善達…」

が善達の名を呼ぶと弱々しい瞳でを見た。

『……か…』
「そうだよ。善達…アンタ…自分の最後がどうなったのか…わかってる?」
『…あぁ…』
「…そっか…じゃ、アンタはどうしたいの?」

澪はと善達の会話を数歩下がったところで静かに見守っていた。
弱々しい瞳でを見る善達。
このまま放って置けば成仏する事も出来ず苦しみの中に意識を残す事になるだろう。
だからこそは問う。
生きて茜と薊を止めるか、成仏して楽になるか。

『……』
「うん…」
『…薊と茜を…頼む…』

ガラスの目玉をに手渡した。
それはと澪がずっと探していた人形の目玉。
そして善達は静かに瞳を閉じた。
に全て託すかのように。
も善達の答えを受け止めた。

「それが…アンタの答えなんだね…善達…」
『あぁ…もう私に出来る事はない…』
「…わかった…薊と茜は助けるから…だから…ゆっくりと休んで…」

はソッと善達の頬に触れた。
すると善達の身体はスーッと優しい光に包まれ消えていった。
はゆっくりと目を開け、立ち上がった。

…」
「…これが…善達の望んだことだから…だから…あたしは…薊と茜を助ける…」

ジッと澪を見るの目は強い意思に満ちていた。
その瞳に澪は不思議と安心した。
楓と同じ強い意志を感じる瞳。

(…ってさっきから何でこんなに楓君のこと思い出してるんだろ…)

妙に頬が熱くなっている様な気がしてきた。

さっきから妙に楓の事が気になってしまう。

(た、たぶん…楓君だけ別行動してるから…心配なのよ…うん…)

自分に言い聞かせるように必死に何度もそう思った。

「澪ーどうしたの?」
「え?!あ、何でもない!」

それぞれの意思を胸に抱きながらと澪は人形の間へと向かっていく。