「…町…大きい…」
ビーチで遊びは市街地まで案内してもらった。
が想像していたより人や店などで活気付いていて賑やかで少し驚いた。
(あ…考えたら私…この町で倒れてたんだ…)
そんな事をボーっと考えながら歩き始める。
時の狭間 04
「あ…このぬいぐるみ…」
町を歩いていると大きなうーくんのぬいぐるみを見つける。
「ちゃん、うーくん好きなの?」
「え…?いや…好きかな…?ちょっと…懐かしく思って…何でだろ…」
「きっと何か思い出そうとしてるからよ」
「なくなった…記憶のこと…?」
「えぇ。過去に何か印象深いことや大切なこと…たとえば大切な誰かがそれを持っていたとかそんな些細なことでも思い出すことってあるから」
「そうなのかな…?…そうだといいな…」
は静かに頷いてギュッとぬいぐるみの腕を握る。
「きっと思い出せるわ」
そう言ってシオンはにほほ笑みかけた。
「うん…」
「そう言えば…Jr.君…どこいったのかしら?」
「Jr.さんなら何か買うものがあるって言ってどこかへ行かれてしまいましたよ」
「Jr.なら大丈夫。きっとすぐに戻ってくるよ」
「それでJr.が今日はもう宿屋で泊まろうと言っていた。遅くなるから先に行っていて欲しいと言っていた」
「…………」
は少し不安になった。
自分でもどうしてそう思ったのかわからなかった。
そして宿屋に戻るとJr.も来てその不安は少しずつ薄れていったが完全に消えることはなかった。
夜になり部屋で眠ろうとしていたが中々寝付けず屋上に出た。
「風が…気持ちいい…」
「?」
「Jr.…」
誰かに名前を呼ばれ声のした方を見るとそこにはJr.がいた。
「眠れないのか?」
「うん…Jr.も…?」
「まぁな…寒くないか?そんな薄着で」
「大丈夫…」
はJr.の隣に座る。
「何か…考え事か?」
「…うん…」
「言ってみろよ。俺でよかったらさ」
は静かに頷いた。
「私…今日一日…目が覚めて…記憶がなくて…でも…初めてJr.見た時…不思議だった…」
膝を抱えながら顔を埋めた。
「何だか…懐かしかった…何も…覚えてないのに…だけど…懐かしく感じて…
なのに…急にJr.を見たら…声が…聞こえてきて…自分が自分じゃないような気がして…意識がボーっと途切れて…」
Jr.の首を絞めてて…と小さな声で言った。
その声は震えていた。は顔を完全に見えないくらい俯いた。
「それに…時々…脳裏によぎる…茶色い髪の女の子…どことなく…モモに似ていて…私にとって…大切な人…そんな気がして…だけど…わからなくて…」
「俺は…それでもいいと思う」
「え…?」
「俺、はだと思う。ただ…ちょっと不安定なとこがあるだけで…自分の意志じゃないって俺はわかってる。
だからどんなことになってもはだけだろ?それに…脳裏によぎってる女の子だってきっとの記憶に関係してると思う。
悪いことじゃねーよ。きっと…だから…俺で力になれることなら…力になるからよ…」
「Jr.…」
その言葉にの頬に涙が流れる。
Jr.はを見て驚き慌てる。
「!?ど、どうしたんだよ?!何か俺、悪いこと言ったか?!ご、ゴメンな?!だから泣くなよ!」
「違うの…嬉しくて…ありがとう…」
は涙を拭いほほ笑みJr.も少しホッとして優しく頭を撫でる。
「たく…あ、そうだ。これ」
「何…?」
Jr.はに小さな袋を渡す。
その袋をジッと見る。
「あけて見ろよ」
「うん…」
少しドキドキしながら袋をあけ中身を取り出して見ると中には赤いリボンが入っていた。
「…これ…」
「あー髪が邪魔だって言ってたから…その…」
「…!」
は昼に店を回っていた時にJr.が何かを買いに行ってた事を思い出す。
「もしかして…お昼に買いに行ってたのって…」
Jr.は少し赤くなりながら視線を逸らす。
は髪を一つにまとめリボンでくくる。
「変かな…?」
「そんなことねーよ…やっぱには赤が…似合うな…」
「…ありがとう…」
も少し頬を赤くしながら下を向いた。
「ねぇ…Jr.…私…また…来たい…ここ…」
「あぁ…絶対に来ような…全てが終わったら…」
「うん…約束…」
「約束…だな」
その約束が少女と少年の絆になる。
そして二人を引き離すことにもなるのだった…
『全てが終わったら貴方は…消えてしまうのだから…』
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