「…はぁ…」
珍しくが窓から外の景色を見て溜息をついている。
「…………」
「どうしたんだ…アイツ…?」
「わからぬ、私が生徒会室に入ってきた時には既にあの状況じゃった…」
「さん…どうしたんでしょう…」
「何だか…があんな状態だと下手に話しかけられないわ…」
「さんがあんな状態な時って…あまりいい事は起きないよね」
大抵、がその様な状態の時はロクな事が起きない。
他の生徒会メンバーにも緊張が走る。
「…お腹減った…」
「「「「「…………」」」」
Love Paradise 03
「お前…腹減ったのか?」
恐る恐るアークがに声をかける。
「うん…」
「よくあんな緊迫した空気を作っといてそれか…?」
「うん…」
「さん…先程、ケーキワンホール食べましたよね?」
「その後走り回ったから消化済み…」
マリンも勇気を出して質問して見るがは上の空。
「走り回った?どうしたの?誰か問題を起したとか?」
「この前のアンヘルの子、追いかけてたら全力で逃げられた上に全力で魔法放たれた」
「「「…………」」
その言葉にアークとリュートは無言になった。
この前のアンヘルの子とは先輩達に絡まれていた飛び級して入って来たアンヘル族の子だ。
一応、男子生徒の制服を着ていたがまだ性別は決まっていないようだった。
そしてはその子の事が気に入った為かここ数日そのアンヘルの子を追いかけ回している。
ヨハンにそのアンヘルの子について聞こうと思っていたがしばらく別の仕事で出張の為聞けないままだった。
ずっとその子にが構っているせいでアークはいつも以上に仕事をサボり他の生徒に厳しく不機嫌そうな顔をしている。
リュートはいつもの様に笑顔を絶やさず仕事をしているがその笑顔は黒さ三割り増し。
そして点数をマイナスする時もいつもの倍の数字で他の生徒が嘆いている。
「何でお前…あのアンヘルのガキがいいんだよ」
「だって…気に入ったから」
「だけど本人は嫌がってるみたいだし」
「でもあの子…どことなく寂しげだったからだからあたしが癒して上げれたらなって思って…さてと、もう一回捜してくる」
が立ち上がったと同時にアークとリュートも立ち上がる。
「!俺達も一緒に行く」
「そうだね、僕達も一緒に行くよ」
「いいよ。だってアンタ達が来たら絶対にあの子を生徒会に入れようとするの邪魔するでしょ?」
二人の考えていた事はにはお見通しだったようだ。
「邪魔しねーって言ったら?」
「それだったらいいけど…」
「それじゃ、行こうか」
三人が生徒会室から出て行こうとした瞬間、勢いよく生徒会室の扉が開かれる。
「すみません!女子生徒が男子生徒に絡まれてるので助けてほしいんですが!」
入って来たのは一年生の女子生徒だった。
「アーク、リュート…任せた!」
はすっごくいい笑顔で二人の肩を叩いた。
「葵やマリンとかアクアに任せろよ!」
「駄目。女の子だけで行かせるのは危険すぎ。それに三人は仕事があるから。それじゃ!」
「あ、オイ!!」
手を振り笑顔で生徒会室から猛スピードで出て行く。
「ね、その喧嘩って…どこで起きてるのか教えてくれる?」
「あ、体育館裏ですが…」
「そう、ありがとう。君はもう帰っていいよ。遅くなると危ないし…今日の僕…すごく機嫌がいいから…」
「は、ハイィ!!」
女子生徒はリュートの笑顔を見て慌てて生徒会室から出て行った。
「おい…このパターンって…」
「リュート…機嫌悪いわ…」
アークとアクアは小声で喋る。
それと同時にリュートが振り返る。
今までにないくらいの真っ黒な笑みで。
「アーク…さっさと喧嘩を止めてさんを追いかけるよ」
「あ、あぁ…」
アークは少し青ざめつつリュートと一緒に生徒会室から出て行く。
生徒会室に残った三人は大きな溜息をつく。
殿のことになると人格が変わるのう…アークもリュートも…特にリュートの場合は…」
「ですよね、それでもさんは全然、お二人の気持ちに気付いてないですし…」
「って…鈍いから…でもあんな状況が続いたら続いたで…こっちがいい迷惑よね…」
そう言って三人は再び大きな溜息をつく。
その頃、アンヘルの子を捜しに行ったは屋上に居た。
「あ、やっぱりここだったんだ!」
「お前…!」
屋上にはずっと捜していたアンヘルの子が居た。
放課後の屋上には二人以外誰も居なかった。
「ふぅー…疲れた。たく…捜し回ったんだから」
「別に捜してくれって頼んだ覚えはない」
「でも捜すなって言われてもない」
は不敵な笑みを浮かべアンヘルの子の隣に座る。
「ね、アンタ名前は?」
「教える必要ない」
「だってアンヘルの子って言うのも変だから。あたしは」
「…ユニシス…」
「ユニシスか。よろしくね」
「よろしくするつもりはない。大体…何で俺にこだわる訳?」
「気に入ったからって言ってるじゃない」
「俺が…アンヘル族だから?俺が…魔法を使えるから?お前も…どうせ他の奴等みたいに気持ち悪がってんだろ…!」
「…………」
大きな声で叫んだユニシスは鋭い目付きでを睨む。
「あのさ…あたしが何でそんな面倒な事しないといけないの?」
「え…?」
「嫌いな奴をわざわざ生徒会にスカウトしないし必死になって追いかけたりしないよ。面倒だし。
あたしはユニシスと言う一人の人間が気に入ったからこうしてスカウトしてるの。それくらい伝わってるって思ったんだけどな」
「…!」
「今までユニシスが何て言われてきたのかはわからないけど…これからそんな風に言ってくる奴がいるならすぐにあたしに教えて。
そんな奴等全員、あたしが根性叩き直してやる。だからさ…生徒会入る気になったらいつでも生徒会室に来てよ、歓迎するから」
ニコッと明るい笑顔を浮かべは立ち上がる。
「さてと、今日はもう帰るね。いつでも待ってるから」
そのままが屋上から立ち去ろうとした瞬間、
「オイ!」
ユニシスはそのまま立ち去ろうとしたの足首を掴みは顔面からこける。
「いったたた…」
「あ、悪い…こかすつもりじゃなかったんだけど…」
「大丈夫…っ!」
「どうしたんだ?」
「膝…擦り剥いたみたい…」
の膝は擦り剥いて血が出ている。
「仕方ない…面倒だけど保健室行くか…」
「俺が治す」
「え?」
「魔法の方が確実に治り早いからな」
そう言ってユニシスはの膝の上に手を差し出し呪文を唱える。
呪文を唱え終えたと同時に膝の傷が癒える。
「これで大丈夫だと思うけど…まだ痛むか?」
「ううん、全然。ありがとう、ユニシス」
「なぁ…俺…」
「オイ…あれ見てみろよ」
「うわっ…生徒会長とアンヘルの化け物じゃねーか」
「…!」
屋上にやって来たのは見るからに柄の悪い男子生徒二人組み。
「オイオイ…生徒会長に気に入られてるからってあんまり調子にのんねー方がいいぜ?」
「お前はどうせ人間じゃないんだからな」
「…うるさい!お前等に何がわかるんだよ!!」
「お前…さっき魔法使ってたよな。生徒会長に何しやがったんだ?」
「オイ…化け物!お前…生徒会長を傷付けるようなことしてねーだろうな?」
「って言うかお前が生徒会長に気に入られてるって思うと何か笑えてくるよな!」
「いったい、どんな風に脅したんだろうな?ハハハ!!」
「っ…!」
自分を馬鹿にして笑い出した男子生徒を思いっきり睨みつけるユニシス。
「あぁ?!何、化け物が睨んでんだよ」
「お前…魔法使えるからって偉そうにしてんじゃねーぞ」
「テメー等…うぜぇ…」
ずっと黙り込んでいたが口を開いた。
ゆっくりと立ち上がりユニシスを馬鹿にしていた男子生徒二人組みの内、一人の腕を掴む。
「いっ!!!」
「テメー等…いい加減にしとけよ。さっきからうっとおしい」
グッとは男子生徒の腕を掴んでいた手に力を入れる。
「うわぁっ!!!
掴んでいた男子生徒の腕を離し背中を思いっきり蹴り飛ばす。
「で…テメーもだ!!」
もう一人の男子生徒の方に素早く振り返りそのまま顔面を蹴り上げる。
「ぐぁっ!!」
そのまま男子生徒二人組みはその場に倒れ込む。
「テメー等の顔の方がよっぽど笑えるっつーの。ったく…減点、五千点。これでアンタ達幼稚園からやり直し決定ね」
「お前…」
「ごめんね?ずっと黙り込んでて」
「……俺の為に…怒ってくれたんだろ…?ありがとう…」
「いいって。生徒会長として当たり前だし…それにユニシスのこと悪く言われるの我慢できなかったから」
「……」
「あ、やっと名前呼んでくれた。少しは進展かな?それじゃ、あたしはまだ仕事あるから生徒会室に戻るね」
ユニシスの肩をポンッと叩き屋上から出て行こうとする。
「!俺…俺!生徒会に入りたい!」
「…本当…?」
そのまま屋上から立ち去ろうとしたがユニシスの発言に思わずは振り返る。
「…お前が…俺の事…気持ち悪がらずに俺自身の事を受け入れてくれたから!
俺の事…受け入れてくれたのお前が…初めてだから…だから俺!の傍に居たい!」
「ユニシス…」
少し驚きが隠せなかったも優しくほほ笑みかける。
「歓迎するよ、ユニシス」
「と言うわけで今日から生徒会のメンバーになった」
「ユニシスだ」
無愛想な表情で名前だけ告げる。
生徒会室に戻ってみるとそれはそれはすごい状況だった。
イライラしてかなりのスピードで報告書を終わらしていたアーク。
しかし報告書はかなりグシャグシャ。シャーペンは五本犠牲に。
いつもの様にニコッとほほ笑みを絶やさずに仕事をこなしていたリュート。
しかしそのほほ笑みは恐ろしいくらい真っ黒。その笑顔の犠牲者は数十名。
何も言うまいと言わんばかりの表情の葵、アクア、マリン。
「あー…やっぱりが気に入ったアンヘルの子って…ユニシスだったんだ…」
「…アクア!?お前が…生徒会に居るのか…?!」
「あれ?二人とも知り合い?」
「同じクラスだから…」
「そうなの?じゃ、アクアがユニシスの指導係でいいかな?」
「俺は嫌だ!!絶対にコイツとなんて…!」
ユニシスはそう言いながらの後ろに隠れた。
「どうしたの?ユニシス」
「俺は…アイツと一緒になんて無理だ!!」
「あら…遠慮する事はないわ…仕事…ゆっくりと教えてあげるから…フフ…」
「お前の教える事なんてロクなことねーだろうが!!」
「そうかーじゃ、生徒会止めろ。生徒会は結束力が大事だしな」
「そうだね、君はまだ高等部に入ってきて日が浅いし…生徒会はしんどいんじゃないかな?」
ものすごく楽しそうな笑顔のアークと爽やかな笑顔のリュート。
「俺は…」
ギュッとの腕に掴まるユニシス。
そんな様子のユニシスに気付いたはサラッとすごい事を発言する。
「じゃ、あたしがユニシスの指導係するわ」
「は?」
「え?」
「だってユニシス、アクアとなら大丈夫かなって思ったけど本人は嫌がってるし…あたしでいいかな?」
は少し不安げにユニシスの顔を覗き込む。
「うん、お前だったら…別にいい」
「そっか。じゃ、一緒に頑張ろうね」
は素直に返事をしたユニシスの頭を撫でる。
「が、ガキ扱いするなよな!」
「ごめんごめん。それじゃ、早速仕事の説明するけど…あ、先に資料とって来るね。ちょっと待ってて」
そう言っては慌しく生徒会室を出て行く。
を見送った後、ユニシスの視線はアークとリュートに向けられる。
「俺は絶対にお前達との関係が幼馴染以上になるなんて認めないからな」
「なっ!?」
「…………」
ジッとユニシスはアークとリュートを睨み付ける。
アークは眉間にしわを寄せ握り拳を震わせていた。
リュートも笑顔から一気に冷徹な表情になる。
「俺はに恩返ししたいと思ってる。だけどお前達のどちらかがと付き合うって事になると
俺は嫌だ!だから何が何でも邪魔してやるからな!お前達との事!」
「このガキ!さっきから黙って聞いてりゃー…!」
「アーク、落ち着きなよ。子供の戯言くらい軽く流さないと」
「そう言うわりにはリュート…笑顔が黒いぞ…絶対にキレてるだろ…」
「アーク、殴られたい?」
ニッコリと真っ黒な笑みを浮かべながらアークの方を見るリュート。
「…遠慮する…」
「とにかく…ここまで宣戦布告されたら引き下がる事なんて出来ないよね。僕もアークも」
「まぁな…他の奴の事だったらどうでもいいけどの事になると話は別ってことだ」
「じゃ、これからは邪魔しまくるからな」
「こっちこそ。二人っきりとかなんてさせないから」
「絶対に邪魔してやるからな!」
ユニシスはムッとした表情でアークは機嫌の悪そうな表情でリュートは口元には余裕の笑みを浮かべながら互いに睨み合う。
そんな中、ガラッと音を立てながら扉が開かれる。
「あれ?三人とも何してんの?」
扉を開けたのは資料を取りに行っていただった。
両手に大量の資料を持っていてかなり重そうだ。
「別に何でもねーよ。あ、。重そうだな。持ってやるよ」
アークが素早くの持っている資料を手に取る。
「あ、ありがとう。アーク」
チラッとリュートとユニシスの方を見てフッと笑う。
「ユニシスーちょっとこの資料について教えたい事があるから来てくれるかな」
「何だよ」
「あのね、ここが少しややこしいからどうしてもわからなかったらあたしに聞いてね」
「…が一回教えてくれたらそれですぐにわかるって。お前教え方上手いし…」
「ユニシス…嬉しい事言ってくれるじゃん!」
そう言うとは笑顔でギュッとユニシスを抱きしめた。
「ば、バカ!抱きつくな!」
「ゴメンゴメン」
「…………」
ずっと黙り続けていたリュートがに近付く。
「さん。今日、一緒に帰らない?」
「え?今日?どうして?」
「美味しいケーキ屋さんを見つけたんだ。いつもお世話になってるしよかったらご馳走するよ」
「本当!?行く行く!」
はリュートの言葉に目を輝かせる。
するとリュートはニッコリとほほ笑む。
「よかった。それじゃ、二人で行こうね」
「うん!もうリュート大好き!」
はリュートに満面の笑みで大好きと言う。
「それじゃ、仕事頑張ろうか。二人でケーキ食べに行く為に」
そう言いながらリュートは勝ち誇った笑みを浮かべながらアークとユニシスの方を見る。
戦いは始まった。
張本人のはまったく気付かずに…
そして生徒会メンバーの女子達は…
「はぁ…面倒な事が起こりそうじゃな…」
「ですね…皆さんさんの事になると性格変わりますし…」
「本当…いい迷惑よね…」
仕事をしながら遠目で見守っていた。
そして三人は心の中で他でやって欲しい…と強く思った。
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