俺達…一緒に生まれてきて…
一緒に育てられてきた…
ずっと一緒に居ようと約束したけど…
ずっとなんて無理なんだ…
たとえ一緒に生まれてきたとしても…
別々に生きて…そして死んでいく…
永遠なんて本当はないんだ…
だったら俺は……お前に殺された方がいい…
そうしたらお前の役目は終わりでお前を傷付けることはないのに…
俺も…役目を果たさずに…すむ…
お前を傷付けずに眠れる…
だから…決めた…俺は…






紅キ雫ニ滲ム蝶 00








「楓?どうしたの?ボーっとして」
「ん?あ、あぁ…ちょっと考え事」
「ふ〜ん…楓が考え事…似合わなっ…」
「アハハ。お前が考え事する方が似合わねーから安心しろ」
「相変わらず腹黒いな…楓は…」
「何か言ったか…?」
「…何でもありません…」
「よろしい。あー今日の昼はお前の作った料理と言う名の殺人兵器食べるのか…」
「ちょ、それどう言う意味ですか?楓さん…折角、お弁当持ってきたのに…」

そんな何気ない会話をする。
久々だ。とこうして二人で出かけるのは。
ここのところまともに会話すら出来ていなかっただけにこんな風に何気ない会話が出来ることが嬉しく思える。
もうすぐ俺は…

「なぁ、
「何?楓」
「俺達…ずっと一緒だって約束したよな…」
「うん。あたしが記憶を失ったっばかりの頃…一人で泣いてたら楓が『俺が居るから』って言ってくれたんだよね」
「それでその時に約束したんだよな。ずっと一緒に居ようって…」
「うん…だから今もこうしてあたしは楓と一緒にいる」
「そうか…ありがとな……」
「何、お礼なんて言ってんのよ?だって約束したじゃ…」

振り返ったら背中合わせに座っていた楓が居なかった。

「楓…?」

この時あたしは何かが崩れる音が聞こえた気がした。
何かが変わるんだと思った。
立ち上がり周りを見渡しても楓の姿が見えない。

「もう…どこ行ったんだろ…あんの野郎…そんなに人の作った料理が嫌か…?」

嫌な予感がしつつも楓を探すために森の中へと歩いた。
すると目の前にひらひらと羽を広げ飛んで来た。
ぼんやりと光を放つ紅い蝶。

「…紅い蝶…っ!頭痛っ…!」

目の前の蝶を見つけた瞬間、今までに感じたことのないくらいの激痛が頭に走る。

『もし…俺が俺じゃなくなったら…儀式を…』

の脳内に白黒の映像が流れる。
ぼんやりとしか見えないがその声は楓にそっくりだ。

「っ…あ、治まった…」

痛みが治まったと同時に目を開けるとそこは村だった。
振り返っても来た道は消えていて出口などなかった。
まだ昼頃だったのに真っ暗な夜。
まるで闇の世界。
だけど不思議とは懐かしく思えた。
それと同時に何かが起こると感じていた。
何か…良くないことが…
一歩一歩と足を踏み入れていくと目の前に楓の後ろ姿が確認できた。

「楓!」

はすぐに楓の名前を叫んだ。
すると楓はの方に振り向き切ない表情でを見つめた。

…お前が…役目を果たす時が来たんだ…」
「楓…?」

楓はゆっくりと目を閉じほほ笑んだ。

「ごめんな…」

楓の言葉と同時に紅い蝶達が一斉に舞い立つ。
はその光景に思わず目を閉じてしまう。
そしてゆっくりと目を開くと目の前には楓は居なかった。

「…楓…?」

蝶が舞い立ったと同時に消えていった楓。
ただ呆然と立ち竦む
静かに落ちる紅き雫…
そして始まろうとする儀式…