「とりあえず繭も見つかったしこの屋敷から早く出よ」
「そうね、あまり長居してもいいような場所じゃなさそうだし…」
「考えたら…一階に行くって事は…大広間を通るんだよね…」
「「あ」」
繭以外の全員が大広間を通る事を全力で拒否したかった。
大広間にはあの澪いわく変態M野郎こと‘楔’が居るからだ。
紅キ雫ニ滲ム蝶 07
「あー…一気に行く気失せたわ…」
「確かにあそこ危ないし…」
「大丈夫よ?澪…お姉ちゃんがどこまでも澪の貞操…ごほんっ!澪の事を守り続けるから。もちろん!ちゃんもね」
「お姉ちゃんがいなかったら私には危険は迫らないから」
澪はニッコリと笑顔でドゴッと音を立てながら返事をする。
(あぁー…繭…また澪に射影機で殴られてるよ…と言うより…貞操って言ったよね…?)
「、気にしちゃ駄目だよ」
「え、あ…うん…ってオイ!?何であたしが思ってた事がわかるんだ!?何、普通に会話しようとしてんの!?」
ボーっと天倉姉妹のやり取りを見て疑問に思った事を普通に樹月に返答される。
ニッコリといつもの様に爽やかで尚且つ真っ黒な笑顔での隣にいつの間にか立っている樹月。
「え?どうしてって…の事なら何でもわかるよ。君が危険な時とかも…辛い時も…」
「樹月…」
サラッとカッコイイ事を樹月は言うが何故の心が読めたのかと言う問いに対しては答えになっていない。
「そして…今、が僕に隠し事をして居ると言う事も…ね?」
「っ!!」
樹月の笑顔に背筋に悪寒を感じる。
果てしなく真っ黒な笑顔だからだ。
澪が血濡れの部屋に行ってる時に思わず睦月の名前を口に出してしまったからだ。
睦月はまだこの村に居ると言う事を口に出してしまってから樹月は変わらない笑顔で居るがかなり機嫌が悪い。
何故ならば笑顔が3割り増し黒いからだ。
の隙を突いて睦月の事を聞きだそうとしてくる。
しかしも負けじと話を逸らす。
「隠し事なんてしてないって!!してるならせいぜいスリーサイズだから!!」
「あぁ…のスリーサイズなら…知ってるから」
「えぇ!?そんな事、教えた覚えはないんですが!!」
「見ただけでわかるよ、普通に」
サラッとすごい事を口にする樹月。
「ふ、普通じゃない!!普通じゃない!!」
「じゃ、が隠している事も普通じゃないの?」
「うん!普通じゃな…!!」
ハッと気付き口を押さえるが既に時遅し。
「やっぱり隠し事してるね…」
「し、してない!!」
「…さっきも言ったけど…言わないと…襲…「この変態白髪少年がぁ!!!」」
ドゴッと音が響く。
どうやら澪がセクハラ発言しかけた樹月の後頭部を射影機で殴ったからだ。
大抵はが話を逸らそうとして失敗して澪がすぐに話を止めてくれると言うパターンばかりだ。
「澪、僕との時間を邪魔しないでくれるかな?」
樹月は後頭部を思いっきり射影機で殴られたにも関わらずとても爽やかな笑顔で真っ黒なオーラを放っている。
「あ、だってのピンチは私が助けないといけないから。こんな変人ばっかりのメンバーだし」
「アハハ…君も十分、変だよ」
「あー…また始まった…本当、仲悪いんだから…」
再び澪と樹月の口論が始まりは溜息をついて数歩離れる。
「ハァー…さっさとこの屋敷から出ないといけないのに…」
「大丈夫?ちゃん」
溜息をついていたを心配そうに顔を覗き込む繭。
「あ、ううん。大丈夫。ちょっと…疲れたなって思って」
「私の事で迷惑かけたのね…この屋敷結構、広いから…ごめんね」
「ううん!いいんだよ。あたしも捜してるから、双子の兄。だから繭が謝る事じゃないよ?それに心配だったから、繭の事」
「ちゃん…」
そのの一言でホッとしたようで繭はほほ笑む。
(こうしてたらすごく大人しい感じで大人っぽくて可愛いんだけどな…繭って…)
「ちゃん…そんなに私の事…思ってくれてたなんて…」
「へ?」
キラキラとした目でを見詰めちゃっかりと両手を握っている。
「ありがとう…ちゃん…私…ちゃんのためならこの身を捧げる事も出来るわ!」
「え?…はぁ?!」
「さぁ、ちゃん。この村を抜け出したら一緒に天倉家で住みましょ?そうすれば澪も一緒だし…ね?」
「あ、いや…ねって言われてもね〜」
再び繭のペースにのまれつつあるが何とか対応する。
(あー…繭って本当…これさえなければすごく可愛いのに…!)
「お姉ちゃん!いい加減にしてよね!が困ってるじゃない」
「ヤダー澪ったら〜ヤキモチ?」
「潰すぞ…ボケ姉が…!」
「うふふv澪にならなんだってされても構わないもの!澪の頼みなら何だって聞くわ!」
「じゃ、死んでください」
ニコッと笑顔で繭の相手をする澪。
いつ見ても恐ろしい姉妹だ。
「クス…仲良いね。あの二人」
「えぇ!?仲がいいように見えるのか!?樹月!!」
「うん。ほら紗重と八重を思い出すじゃないか」
「そ、そうだけど…ハァー…」
二人を見ていると本当に紗重と八重を見ているようだ。
しかしそれは繭は紗重の意識と一つになり始めているのではないかと不安が胸を過ぎる。
「、大丈夫だよ」
「え?」
「繭はきっと大丈夫。もしも本当に紗重の意識と一つになってしまったとしても必ず助けよう」
「樹月…」
ずっと震えていた手をギュッと握ってくれる樹月の手はすごく温かくはホッとする。
「ありが……待って…?またアンタはあたしの心を読んだの!?」
「アハハ。それじゃ、先に進もうかー」
「待てぇ!!爽やかに話を進めるなぁ!!」
「さぁ、澪も繭もその辺で喧嘩は止めて黒澤家を出ようか」
「樹月ぃ!!!」
の叫び声も空しく樹月はそのまま先へと進む。
そのまま先に進むといよいよ大広間の前まで辿り着いた。
「やっぱり入るの少しためらうわ…」
「大丈夫、もう何も居ないよ」
「本当?樹月がそう言うなら…まぁ、本当に大丈夫だろうけど…」
「じゃ、行こうか」
と澪は大広間に入るのをためらっていたが樹月の言葉を信じ大広間へと続く戸を開いた。
すると楔も紗重も居なかった。
「何も…居ない…?」
「嫌な感じもしない…」
「…………」
大広間に入った途端無言で繭が先に歩く。
「お姉ちゃん?」
澪は繭を呼び止めるが繭は無言で大広間の中心へと立つ。
そこは紗重が立っていた場所だ。
「っ!」
偶然なのか必然なのか繭の姿に紗重の姿が重なる。
「お姉ちゃん?」
澪は繭に近づき顔を覗き込む。
「どうしたの?お姉ちゃん」
「…ううん。何でもないわ。と言うより澪…そんなに顔を近付けられると…お姉ちゃん…照れるわ…」
「お姉ちゃん。死んでくる?」
「…………」
普段と変わらない繭。
だけど無意識であの場所に立ったと言うならやはり繭は…
「…大丈夫」
「樹月…大丈夫だって言ってるけど…そんな根拠どこにあるの?」
「…?」
「本当に紗重と一つになってしまったら繭は…どうすると思う…?
きっと澪と儀式をしたいと願うよ。だって澪は八重にそっくりで…紗重は八重との儀式を望んでいる。澪の事を紗重は八重と思ってる。
そして繭が儀式の事を知ってしまったらきっと澪との儀式を望む。双子が…一つになる儀式を…」
「…!…思い出したの…?儀式を…」
「うん。思い出したよ。繭と会って思い出した…本当…馬鹿げてる。一つになんて…そんな風に聞こえのいいように言って…この村に生まれた双子を騙して…」
「…」
儀式・・・この村ではある場所を封じる為の儀式がある。この村で生まれた双子は双子巫女または双子御子となる。
姉がまたは兄が妹または弟を殺すと言う儀式。そしてある場所へと投げ込まれた妹または弟は蝶となり村を助くると言われている。
そして双子が一つになれると言われている儀式である。
しかし儀式を行い一人だけ生き残った姉や兄は感情や心を失ってしまったり霊に取り付かれてしまい自らの一族を滅ぼしてしまった所もあると言う。
樹月も儀式を行い双子の弟の睦月を亡くしている。しかし二人の儀式は失敗。
そして樹月は今のような真っ白な髪になってしまったのだ。
「あたしは…だからあたしは…この村が嫌いだった…!」
ギュッとは握り拳を震わせていた。
「ー樹月くーん。何してるの?置いてくわよ」
「ちゃーん!私の胸に飛び込んで来て!!」
先を進んでいた澪と繭はと樹月の名前を呼びこちらに手を振っている。
「あ、うん!今行くー!ほら樹月、行こう」
平然を装い樹月に手を差し出す。
「…たとえ彼女が紗重と一つになってしまって儀式を望んだとしても…必ず助けよう。
あんな儀式はもう…誰もしちゃ駄目なんだ…僕と睦月のような思いは誰にもして欲しくない…」
「樹月…うん…ゴメン…」
「謝る事じゃないよ。今、僕達に出来る事をやって行こう」
「うん…」
「それに謝られるよりキスがいいな」
「は?」
樹月の突然の発言にはかなり間の抜けた声が出る。
「な、何言ってんですか?!樹月ーと言うよりそう言うのは好きな子に言いなさい!!!」
「うん、だか…「こらぁ!!!白髪セクハラ少年!!!!さっさとから離れてこっちに来なさーい!!!!」」
澪の声で樹月の言葉が途切れる。
「な、なんて言おうとしたの?」
すると樹月はいつもの様ににほほ笑みかける。
「秘密」
「なっ!何で!?」
「それはまだ…には早いから。さぁ、早くしないと澪が暴れだしそうだから行こう」
「う、うん…」
納得いかないと言わんばかりの表情のは樹月と澪と繭の元へ駆け寄る。
(今はまだ…この気持ちを伝えるのは早いから…もう少しだけ幼馴染のままで居させてね。…)
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