「開いてないし…」
、蹴飛ばしたら?なら出来るよ」
「澪ー笑顔で言わないでよ。それに澪の方が絶対に壊せるよ。素手で」
「その前に澪が射影機で撮るの先だよね」






紅キ雫ニ滲ム蝶 06







坪庭階段を上り客間を通り明滅の部屋の部屋に来たのはいいのだが祭壇の間に入る扉が開かない。

「一応、撮ってみるけど何も写らなかったら樹月君はと歩く時は3m離れてね」
「大丈夫だよ、絶対に何か写るから」
「ハァ…(あーまた始まった…この二人は仲がいいのか悪いのか…八重と樹月もそうだったな。喧嘩をしながらもやっぱり二人は仲が良くて。やっぱり澪は似ている…)」
ボーっと思い出し始めた八重との思い出を振り返ると楽しい思い出もあったがほとんどは真っ黒な八重の笑顔しか思い出せない。

「ハァ…もっとマシな思い出ないのかね…」

カシャッと音がなり澪は射影機で祭壇の間に続く扉を写していたようだ。

「あ、何か写った…」
「じゃあ、さっきの話はなしってことだね。じゃ、澪がから離れて歩いて」
「それは約束してないから」
「ハァー…喧嘩しないで。で、澪。何が写ったの?」
「別の場所が写り込んだみたいなんだけど…」
「うっわ…こらまた…」

壁一面に血がついている何とも行く気が失せそうな部屋だ。

「血濡れの部屋だって。行きたくないな」
「確かその部屋行くには…大広間に行かないといけないよね」
「「…………」」

樹月のその言葉でしばらく無言。
大広間。その場所自体通るのは大変じゃないがそこには絶対無敵の楔がいる。
誰も行く気にはなれない。

「それじゃ、澪。逝ってらっしゃい」

突然、樹月がいい笑顔で澪に手を振る。

「何であたしなの?って言うか字が違うし」
「いや、あってるよ。それに澪は武器を持ってるし澪が楔に殺られる可能性は天と地がひっくり返ってもありえないだろうし」
「い、樹月…それは本当かもしれないけど流石に澪一人で逝かせるのは…」
「オイこら待て、。お前も字が違ってんぞ」
「それ以前に澪は喋り方が変わってるよ」
「とにかくを行かせるとあまりにも危険すぎる」
「だったら樹月君が行けば?男なんだし」
「それは…出来ない…」

突然、真剣な表情をする樹月。
二人は何か大変な事情があるのかと息を殺して樹月を見た。

「ど、どうして?」
「簡単だよ。から離れる訳にはいかないからね」
「い、樹月?」
「…………」

澪が突然、立ち上がった。

「お前…表に出ろ…」
「み、澪!?」
「そうだね。楔を何とかする前に澪、君を何とかしないといけないみたいだね」

そう言って樹月が立ち上がった。

「い、樹月まで?!」

二人とも青筋を立てながらニッコリと黒い笑みを浮かべている。

「だいたい、樹月君は幼馴染だからってに密着しすぎなのよ!!その内、セクハラ罪で訴えられるわよ!?」
「それなら先程出会ったばっかりなのにに馴れ馴れしくし過ぎじゃないかな?いくら同姓の友達とは言えそれは許せないな」

樹月と澪のをかけた争いが始まったがはすぐに納まるだろうとまったく口論を聞いていなかった。

(さっき…気を失って倒れてた時…夢の中でソッと触れてくれたあの温もりは…誰の…手…?樹月とは違う…何かよく知ってる…温かさ…)

目を閉じボーっと色々なことを考えた。

(紗重は…どうやったら助けられるんだろ…さっきのままじゃ絶対に無理だし…と言うよりあたし達のことわかってなかったみたいだし…
じゃあ、この村に来た時…初めて紗重と会った時の状態の紗重だったら…話せる…その時に斬るしか…ないか…それにしても…睦月は…どこにいるんだろ…
流石にこればかりは樹月に聞くのは気まずいしな…儀式で弟を殺してしまったと言う罪悪感は拭いきれていないから…そんな樹月に睦月のことは言えない…
やっぱり一人で捜すしかないか…居るとしたら…やっぱり立花家かな…睦月は…どんな思いで儀式を行ったんだろ…樹月はどれほど辛かったんだろう…
どうしてあたしは…こんなことを忘れていたのだろう…楓と…あたしも…双子だから儀式行う予定だったのかな…?…何だか違う気がするな…)

「だぁー!!わかったわよ!!私が行けばいいんでしょ!?」
「そうだよ。最初からの為に行けばよかったんだから」

がぼんやりと考え事をしている内に二人の口論は終わっていた。

「それじゃ、。行ってくるけどそこのセクハラ白髪野郎に何かされたら大声で叫んでね。すぐに来るから!」
「う、うん。あたしもついて行こうか?」
「いいの!があんなM野郎に近づく必要はないわ。それじゃ」

射影機を手に澪は大広間の先にある血濡れの部屋に向かって行った。

「いってらっしゃい…(M野郎って…楔?)」

そして澪が出て行って数秒後…

「おらM野郎!!!!そんなに虐めてほしかったら虐めてやろうじゃない!!!この天倉澪様が相手してやろうじゃないの!!!!!!かかってこねーのか!?」

澪の物騒な叫び声が聞こえてきてはハァーッと大きな溜息をつき樹月は満足げな笑顔を浮かべていた。

「澪なら…楔に口で勝てそう…」
「だと思って僕も澪に行かせたんだけどね」
「樹月…相変わらずやり方が残酷と言うか黒いと言うか…」
「何か言った?」
「ううん、何でも」

ニコッとは笑顔で答えた。
下手に何か言ったら呪われそうだったからだ。

「ねぇ、樹月。全部…全部終わって村から出れるって事になったら…樹月はどうするの?」
「どうするって…わからないな…僕は元は霊だったんだし…」
「だったらさ…あたし達と一緒に…暮らさない?紗重も助けて…(そして睦月も…助けて…)」
「ありがとう…だけど僕には出来ない…」
「どうして?」
「睦月を置いて…この村から出る事は出来ない…僕一人でそんな幸せな思いは出来ない」
「樹月…もし…睦月も助けられたら…樹月は…一緒に来てくれる?睦月も…一緒に…」
「睦月は…もうこの村にはいないから…蝶に…してあげられなかった…から…」
「違うの。そうじゃなくて…睦月は…まだこの村にいるから…」
「本当なの…?それは…」
「っ!」

はしまったと思い口元を手で覆い隠すが既に遅かった。

…睦月は…まだこの村に居るのかい?睦月は…まだ…」
「い、今のはもしもの話!!!!」


名前を呼ばれジッと樹月に見つめられる

「本当の事を…言ってくれ。絶対に怒ったりはしないからさ」
「樹月…(目が…目が笑ってない…!)」

ニコッとほほ笑んでいるが目がまったく笑っていない。

…言わなかったら襲うよ?」
「………は?」
「聞こえなかった?襲うよ。このまま押し倒「ギャーーーーーーーーーーーー!!!!!!!!!!!!」」

は樹月の発言を聞き大声で叫ぶ。

「どかんかぁ!!!!!のピンチなんじゃぁ!!!!!!あのセクハラ野郎!!!!
フェイタルフレームで成仏させんぞ!!!!!!!!邪魔だぁ!!!!!!!
このM野郎!!!!!!快感を超えた何かを感じさせんぞ!!!!!!!」

すると何か物騒なことを叫びながらダッダッダッダッと物凄い勢いで階段を上ってくる足音が聞こえ勢いよく扉が開かれる。

「オイこら!!!そこのセクハラ白髪少年!!!!!に何したぁ!!!!!」
「み、澪!?(ほ、本当に帰ってきた…叫んだら帰ってきた!澪…カッコイイ…)」
「まだ何もしてないよ」
「まだって何!?何する気だぁ!?オイ!!樹月!?」
「アハハ。大丈夫、痛くはないから。むしろ気「こらぁ!!!セクハラ発言はその辺にしとけーーー!!!!!!!」」

樹月がどんどんと放送禁止用語を喋りかけ澪が叫んでそれを止める。

「まぁ、それは半分冗談として…取って来たの?」
「三重菱の札鍵でしょ。取って来たわ」
「さすが澪。こんな泥棒がするようなことだけは上手なんだね」
「何も出来ない白髪セクハラ野郎よりはマシよ」
「酷いな。これでも褒めてるつもりなんだけど」
「だから!!喧嘩する前にさっさと扉開けんかい!!!!!」

ついにもブチギレ。流石に長時間腹黒コンビの喧嘩に挟まれ続けストレスが限界値に突破したのだろう。
澪が持ってきた鍵で祭壇の間に続く扉を開け澪が一歩部屋に足を踏み入れた。

「澪…?澪!?澪!!!!!!」

部屋の中で誰かが澪の名前を叫ぶ。
すると澪はと樹月の方を見る。

「ちょっと待ってて」

今までにないくらいいい笑顔で扉を閉める。

「やっぱり来てくれたのね!!!あー澪!!!!愛してるわ!!!!」
「何が愛してるわじゃ!!!!置いて行くなとか勝手に言ってどっか言ったのはお前だろ!!!!この馬鹿姉貴が!!!」
「だって澪がどうしても私のことを愛してるって言ってくれないから…」
「関係ないでしょうが!!!!!!って言うかなんで変態なお姉ちゃんなんて愛さなきゃなんないのよ!!!!!」
「んも〜澪ったら〜照れなくてもいいのよ!!!さぁ、私の胸に飛んで来て!!!!!」
「誰が飛び込むかぁ!!!!!!!!!!」

祭壇の間での誰かの激しい愛情表現と全力で拒否をする澪の叫び声。
今までにないくらい澪はキレていた。

「…樹月…逃げよう。このまま…」
「そうだね。さ、。手繋いで。迷子になったら危ないから」
「あ、うん。ありがとう、樹月」
「それじゃあ、行こうか」
「うん」
「って待て!!!どこに行こうとしてんのよ!!!!」

バンッと扉が開かれ澪が二人を呼び止める。

「いや、澪…誰かに熱いラブコールを受けてたから邪魔しちゃいけないと思って…」
「そうだよ。よかったね、澪。君にも相手が居て」
「違うの!!」
「澪ーー!!!!!」
「うぉっ!!!抱きつくなぁ!!!!変態馬鹿姉貴がぁ!!!!」

澪の背中に勢いよく飛びついて来たのは澪そっくりのそして紗重にとても似ている少女だった。
樹月に会う前に黒澤家の門の前で見かけた澪の

「お姉さんの繭さん!」
「え?どうして私が澪の姉だってことを…まさか…澪…か、彼女が!?」
「どうしてそうなる」
「酷いわ…澪…私と言う存在が居ながら…全部遊びだったのね…」
「遊びも何もお姉ちゃんとは姉妹以上の関係になった覚えはないんですがー」
「あ、やっぱり…澪のお姉さんなんだ。初めまして、です」

はニッコリと笑顔で繭に手を差し出す。

「…………」

ジッと繭はを上から下へ下から上へと見る。

「あ、あの…」
「素晴らしいわ…」
「は?」
「澪以外にもこんなにも可愛い子が居たなんて…私、天倉繭。繭って呼んでね。よろしくちゃん」

ニッコリと笑顔での手を握り握手をした。

「よ、よろしく…繭…」
「キャー!!澪!!繭…だって!!聞いた!?可愛いわ!!もう澪とちゃんどっちから頂けばいいのかまよ「どっちも頂くな!!」」

ゴスッと澪は射影機の角で繭の後頭部を叩く。

「痛い…澪…澪は…私を捨てるのね…私はこんなに愛してるのに…どうして澪は私の愛情を受け取ってくれないの…?」
「あのーお姉様ー自分の胸にそっと手をあててみて下さい。答えはすぐに見つかるはずですから」
「どうしても澪が私を愛してくれないって言うなら…私はこれからちゃんとの愛を育んでいくしかないじゃない!!!」
「えぇ!?」

繭はすぐさまの隣に行き肩と腰に手を回す。

「ねぇ、ちゃん。彼女はいる?」
「え?か、彼女?!彼女は流石に…」
、お姉ちゃんの聞くこと真面目に答えなくていいから」
「澪と一緒に私を捜してくれたのね。ありがとう。すっごく嬉しいわ。澪はそりゃーもうこれでもかってくらい可愛いけど…ちゃんは澪とは違った可愛さを持ってるわ」
「えぇ?!あ、あの…そのー…」

は完全に繭にペースをのまれ戸惑う。
すると繭の両手を誰かが掴んでから離れさせた。

「誰…!?」
「初めまして。立花樹月です。とはそれはもう深ーい関係の者ですので気安く触らないでほしいな」
「い、樹月…またその誤解を招くような発言を…って言うか深ーい関係って何よ…」

先程からずっと黙っていた樹月がと繭の間に割って入った。

「そうなの。でもこれからちゃんと深ーい関係になるのは私だからその所はよーく覚えておいて」
「何かな?よく聞こえなかったな…」
「だからこれから私はちゃんと深ーい関係になるの。だから邪魔しないでってことを言ったの」
「寝言は布団で言ったらどうだい?まだ寝ぼけてるみたいだね。何なら眠らせてあげようか?永遠に」
「倍にして返してあげるわ」
…こっち…」

澪が小さく手招きしてくれていて隙を見てその場から抜け出す。

「た、助かった…!」
「ゴメンね。あの馬鹿姉貴が」
「澪が繭に会いたくなかった理由…少しわかった…」
「でしょ」
「大変だね。毎日…」
「まぁ…慣れ?」
「澪…さっきからずっと思ってたんだけど…カッコイイわ…」
「一応、褒め言葉として受け取っておくけど…あんまり連呼したらぶっ飛ばすよ」
「わかってるよ…うん…」
「やっぱり…お姉ちゃんは…紗重に似てる?」
「うん…見た目もだけど…紗重は八重のこと大好きだったから。それであたしのこともそりゃーもう恐ろしいくらい追いかけてくるし色んなところを触り続けるし…」
「あーお姉ちゃんそっくり…」

遠い目をしながら澪は言った。
は澪が繭に会いたくなかった理由がよーくわかった気がした。

(まぁ…あんなに抱きつかれたり暴走されたりしたら…澪でも嫌がるか…と言うより澪が強い理由って…繭に鍛えられ…ううん。考えちゃ駄目だ…)

「それじゃ、楓君を捜さないとね」
「あ、それなら…別の場所に捜しに行かないと…楓はもうこの屋敷にはいないと思うから…」
…それじゃ、一緒に捜そう」
「澪…でも繭は見つかったんだし村から出た方がいいよ。この村に長い間居たら駄目だよ」
「何言ってんの。今の状態じゃまだ村からはきっと出れないと思うしそれにが困ってるのに置いて逃げるなんて出来ないよ」
「澪…ありがとう…」
「いいのよ。私達、親友じゃない」
「澪だけだよ…このメンバーでまとも(?)なの」
「待って、?はいらないから」
「あ、ゴメン。つい」
「澪。何、にいいところ見せて株上げしてるのかな?」
「澪〜酷いわ。お姉ちゃんという存在が居るのに…ちゃんばっかり構ってたからって嫉妬しなくても私はいつでも澪命だから!澪Loverだから!!!」
「お姉ちゃん黙ってて。それに樹月君もの事をほったらかしにしてるからでしょ」

再び澪と樹月の腹黒笑み対決(命名、)が始まり今回は繭まで加わりバージョンアップバージョンでお届けだ。
しかしも流石にこの腹黒いメンバーに囲まれても慣れた。
自分でも慣れって恐ろしいと思いつつも次はどこに行けばいいのか考えていた。

「三人とも、早く行こう。楓はもうこの屋敷には居ないし」
「そう…それじゃ、行こうか。とりあえずこの屋敷から出るとしよう。さ、。手を」
ちゃんはお兄さんを捜してるのね。私も協力するわ。それでね、私…足が悪いから一人で歩くとどうしても皆から離れちゃうからちゃん、手繋ごう」

樹月は爽やかで真っ黒な笑顔でに手を差し出し繭はとっても可愛らしい笑顔かつ真っ黒なオーラを放ちつつ手を差し出す。

「え、あ…あのー…」

この場合どちらと手を繋いでも確実に恐ろしいと直感で感じたはどちらの手を繋げばいいのか迷った。

、手」
「え?あ」

澪がすぐにの手を掴みちゃっかりと手を繋いだ。
どうやらが困っていたのを察して手を繋いでくれたのだ。

「ありがとう、澪」
「お礼言われるほどのことじゃないわ。あんな変態ばっかり相手してたらも疲れるだろうし…」
「澪…(やっぱりアンタは漢だよ。漢と書いておとこだよ!!!)」